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「短歌BLOGを走る2012」提出歌

 投稿者:みずき  投稿日:2013年 5月31日(金)23時38分17秒
  008:深 深大寺そこから先は見えぬ貌(かほ)夢まぼろしと消えし初恋

013:逆 逆光のなかの私は消えさうな玻璃の指紋をなぞり確かむ

029:座 奔放な春がまた来て座るべき脚が見えない 陽炎のなか

035:むしろ 近くよりむしろ遠くで感じたきダリの絵かかる壁のうす闇

036:右 右心房つたふ命が鼓動する君去る朝を淡雪の降る

038:的 身のうちを劇情的とふ鬼奔る青ざむ月のひかりが怖い

070:芸 芸の道、はた美意識の中に置くバレエ‐シューズの蒼きゆふぐれ

078:査 診査する臓器の触るる脈動に耳透かしをり遠く雪降る

079:帯 帯すでに解きしのちの後悔がとほく蒼ばむ 冬の潮騒

083:邪 邪気すでに微熱を孕む身のうちへ黎明の息ふかく吸ひたる

085:甲 掌(て)の甲を翳せば白く影ろひて雪降るらしき雲の落ちくる

098:激 激動の時代を生きて墳墓たる父なる海に咲く寒櫻

若草色の素敵な歌集です。どの短歌もきらきらして眩しい~~
計画、実行して下さった五十嵐さまに心から感謝です。
 
 

麦太朗さま7首選(2013題詠)

 投稿者:みずき  投稿日:2013年 5月30日(木)19時25分42秒
編集済
  012:わずか
わづかでも触れたき人の陽炎と消えてし夢のなかに目覚めぬ

016:仕事
夕星(ゆふづつ)へ傾く夜の風景が仕事帰りの背なを圧しぬ

037:恨
恨みゐし心に触るる優しさの吹かれて落つる春の空蝉

045:喋
お喋りの輪へ降り注ぐ春光の外れに咲きて真白なる薔薇

067:闇
咲きほこる櫻の闇の一歩二歩やさしく匂ふ春をしだきぬ

☆076:納
春なれば時代遅れの人形も納めし蔵の戸を開け放つ

095:例
例へばと言ひて黙(もだ)せる君の背の不意の冷たさ蝉しぐれ降る

麦太朗さん、毎年本当に有難うございます。とっても励まされます。
 

題詠100首2013

 投稿者:みずき  投稿日:2013年 4月21日(日)13時07分52秒
編集済
  001:新   新しき恋の予感に触れしより涙腺ゆるぶ春の羞(やさ)しさ

002:考   考への甘さ歯がゆさ術もなく咽ぶわたしへ春夜明けたる

003:各   如月の各停の窓透かし降る雪へ揺れゐる青き眼差し

004:やがて やがて夢、わたしの中の優しさが呟いてゐる君を許すと

005:叫   絶望を叫ぶいのちが彷徨ひて蹲りたる夜の流星

006:券  この券と恋の予兆を握りしめ改札とほる櫻降る午後

007:別   この駅で別れし人も涙さへセピアいろした過去の断面

008:瞬   一瞬の動揺ののち浮かぶ笑み失意のなかの君は凛凛し

009:テーブルテーブルを飾れる薔薇の照明へ泛ぶ女の淡き妖艶

010:賞   賞状に偲ぶ夏の日激しくて遠き夕日へボール蹴りたる

011:習   爪を噛む習性ありしあの頃へ冬の極(はて)なる月の懸かりぬ

012:わずか わづかでも触れたき人の陽炎と消えてし夢のなかに目覚めぬ

013:極   極寒の水の匂ひの残る手はあの日触れゐし玻璃の氷紋

014:更   更衣(きさらぎ)の風に巻かれしさよならを今も留むるふたひらの耳

015:吐   吐き捨てたことば冷たき後悔が白く降りたる胸に降りたる

016:仕事  夕星(ゆふづつ)へ傾く夜の風景が仕事帰りの背なを圧しぬ

017:彼   彼と似し人夕闇に掻き消えて残り香のごと淡雪の降る

018:闘   闘魂の極みにありて倒れたるボクサーの背の深き哀愁

019:同じ  同じ色かさねて濃ゆき唇の翳ろふ悲恋、卓上の薔薇

020:嘆   嘆くとて彩り美しき春宵を共に観し人いま遠い人

021:仲   過ぐる日の匂ひ立つほど仲良くて今は寂しき薔薇の頃なる

022:梨   するすると梨剥く指も俯ける姿態の影へ消えて雨なる

023:不思議 匠てふ技の不思議に生るる椀 昨日の雨の降りてし五月

024:妙   ふと覚めて妙に濡れゐる目頭に朝の音して夢が見えない

025:滅   幻滅と希望のあはひ苦しくて捨て身の恋に奔る十字路

026:期   思春期の少女に還る潮騒へ女屈みて描くさよなら

027:コメント怯えつつ白紙にしたきコメントに遠き戦場まざまざと見ゆ

028:幾   幾春を越えて古びし樹樹みあげ櫻の頃の哀愁と思ふ

029:逃   逃げるやう去りしあの日へ指繰れば眼差し翳る雪の気配す

030:財   財布より巾着といふ象して夢と優しさまあるく入れぬ

031:はずれ たまさかに季節はづれを降る雪の音無き間(あひ)を櫻(はな)の散りたる

032:猛   猛暑日も足裏冷ゆると亡き母の呟いてをり風鈴の鳴る

033:夏   さよならも言はず別れし面影へ激しき夏のページ閉ぢたる

034:勢   渦潮の勢ひばかり気をとられ恋失ひし魔性の春よ

035:後悔  後悔に脳(なづき)重たき如月を哀しみいろに濡らし人恋ふ

036:少   少しづつ日脚伸びゐる芝露の温むを踏みて児等は惚けし

037:恨   恨みゐし心に触るる優しさの吹かれて落つる春の空蝉

038:イエス イエスとふ応へは未だ見えなくて落胆に降る雨の蛍火

039:銃   銃口へ瞳みひらく絵模様の小寒き春がけふを彩る

040:誇   春愁の指もて梳きし黒髪の誇れる昨夜(きそ)を歳月の過ぐ

041:カステラカステラをふふみて暫し春愁の胸ゆるらかに偲ぶ思ひ出

042:若   ひたすらに秋思の街を流離ふる叙情詩人の若き魂

043:慣   慣習は品位となりて連綿とつづる祖国の現在(いま)のありしも

044:日本  今日本を読みたる夢のあとさきに降る雪香る白秋の詩(うた)

045:喋   お喋りの輪へ降り注ぐ春光の外れに咲きて真白なる薔薇

046:間   間一髪逃れし事故の雨降りてメイン通りの櫻濡らしぬ

047:繋   ときめきを斯くけざやかに繋ぎたる携帯のベル土曜日の雨

048:アルプスアルプスを覆ふ氷雨へ消えさうな姿の生れて虹の懸かりぬ

049:括   独裁と自由それぞれ括弧して憎悪の図式思ふ春の日

050:互   絶望と夢が交互に泛ぶ闇 信じて深き愛が哀しい

051;般   庵奥(あんあう)に懸かる般若と目の合ひていにしへの雪降りぬ たまゆら

052:ダブル バーボンのダブルに泛ぶ春愁を気怠くふふむ夢二の女

053:受   薔薇の頃受けし告白そのままに虚木(うつろぎ)朽たす雨の頃なる

054:商   商魂と枯渇の愛のシンドローム微熱の日日を耐えて今日なる

055:駄目  駄目といふ気配に怯えイエスとふ明日を夢みる一夏(げ)の縮図

056:善   春冷えの善くも悪しくも過ぐる日を苛立つ指でなぞるさよなら

057:衰   衰弱の描線ひきて心電図 櫻明かりのコートが寒い

058:秀   秀逸な短歌(うた)へ玻璃射す春光は心に秘めし薄きくれなゐ

059:永遠  永遠と言ふ囁きの甘やかな日日を攫ひて荒東風(あらこち)の吹く

060:何   何気ない言葉に凭れ昨夜(よべ)よりの哀しみを消す六月の雨

061:獣   見惚れゐし鳥獣戯画の数葉へ歳月を経て古ぶ春の日

062:氏   氏変へし名刺も春の懊悩もこころ育む明日の糧なる

063:以上  「以上、礼」玲瓏とした遠い宙 お下げの髪へ触れし冬の日

064:刑   刑罰をとく受けし日の涙さへ恨みし我れの本音閉ざしぬ

065:投   投げ遣りな態度はやがて陽の透けし樹氷のやうに溶けて俯く

066:きれい 洗ひ髪映して遠き潮騒へいつそきれいな秋思の髻華(かざし)

067:闇   咲きほこる櫻の闇の一歩二歩やさしく匂ふ春をしだきぬ

068:兄弟  肌いろの違ひも濃ゆき宿命の異父兄弟へ真椿の咲く

069:視   画集から逸らす視線に残りゐしゴッホの向日葵激しくもあれ

070:柿   柿の葉の湯船に映る灯し火へ薄羽蜉蝣消えて真夜なる

071:得意  得意気に啼く八月の蝉落ちて殻を残せる樹影悲しも

072:産   産神(うぶすな)に契る一世の運命(さだめ)なれ吹雪くあの日の父の呼ぶこゑ

073:史   戦後史の自虐感とふ悲しくて思惟の雨降る空を見上げぬ

074:ワルツ ワルツ舞ふ鹿鳴館を濡らしゐし明治の雨ににほふ沈丁花(ぢんちやう)

075:良   良きことと辛きこととを併せ持つ運命線の蒼褪むる夕(よ)べ

076:納   春なれば時代遅れの人形も納めし蔵の戸を開け放つ

077:うっすら哀しびも笑みうつすらと泛べたる唇染むる淡きくれなゐ

078:師   悲しみも色鮮やかに消えし日の師の恩情を今も忘れじ

079:悪   耽美なる囁きに痴れ悪しき指伸ばすあしたのユダが見えない

080:修   六月の木陰の椅子に捲りたる寺山修司と午後の珈琲

081:自分  あの冬の悲劇へめくる自分史の余白に挿む亡父の手紙

082:柔   柔らかな春の真水に浸したる運命線の薄き手のひら

083:霞   春霞む野辺のほとりの石佛に魂ほどの陽炎のたつ

084:左   左掌(て)の携帯のこゑ遠過ぎて木陰に落とす秋のスカーフ

085:歯   耳に手に皓歯きよらな昨夜(きそ)の愛 苦しきほどに雪の降りつむ

086:ぼんやり秘密とふ事の次第へぼんやりと頬杖つけば春雨の降る

087:餅   わらび餅 くくみてしやくる女童は父なる海に抱かれ眠りし

088:弱   脆弱な心に棲まふ鬼のゐて激する夜の姿かたどる

089:出口  櫻(はな)の洞まよひて出口なき思ひ恋ほしき袖にすがり泣きたる

090:唯   唯物に徹する君の傍にゐて雪降るなかの私の孤独

091:鯨   鯨尺で裁ちし浴衣へそよ吹ける昭和の風に佇む老女

092:局   犯罪史つづる旧きに美人局(つつもたせ)今は昔の櫻降りつむ

093;ドア  海に向くドア開け放ち寂しけれ春陰とほき濤の寄せくる

094:衆   衆目を逃れて奔る秘め事の櫻吹雪にけふも染まりぬ

095:例   例へばと言ひて黙(もだ)せる君の背の不意の冷たさ蝉しぐれ降る

096:季節  暦繰るおよび透かして感じゐし季節の薔薇が白く浮かびぬ

097:証   寂しらに生きる証しか如月の雪のかなたへ君逝き給ふ

098:濁   濁り沼(ぬ)へ降る夏の陽の激しさに孤独を啼きし蝉の消えたる

099:文   文月へ寄する波音くるしくて去りゆく日日の胸うちかへす

100:止   止め処なく溢るる春のさ緑へ映す私の飛べない素顔
 

西中真二郎さま選(2012題詠)

 投稿者:みずき  投稿日:2012年12月 6日(木)12時29分15秒
編集済
  001:今 今を急く時間(とき)も心も雪のなか白き夕べのなほ遙かなる

003:散 散る櫻(はな)のあはひに佇ちて翳みゆく調べのやうな宙の優しさ

004:果 果てしなき空の彼方にある未来 黒蝶の舞ふ夢を見てゐる

008:深 深大寺そこから先は見えぬ貌(かほ)夢まぼろしと消えし初恋

010:カード カード切る女は白きユトリロの世界に棲むや春の雨降る

011:揃 晩秋と思へど揃へし白菊の切り口寒く鉢に盛りたる

015:図書 図書室をひかりが奔り少年は黙す指(および)を透かしつつ読む

016:力 力まずに過ごす日日なれ 人生を賭けた遠い日思ふ晩春

017:従 従へぬ理由の間(あひ)を降る雨が睫毛を濡らす海いろの玻璃

019:そっくり 過去の恋そしてけふ又そつくりな恋に落ちたる木漏れ日のなか

020:劇 惨劇をまざまざと見し三月の脳(なづき)真白く震へし記憶

021:示 迷ひゐし我が道示す光あり モネの睡蓮あをく見つめぬ

024:玩 姉さまと玩具競ひしあの日まで戻す記憶の螺子が捲けない

025:触 ふと触れて戸惑ふこころ階段の月の真中を君に寄り添ふ

028:脂 樹脂垂らす松の記憶が鮮明に少女のをはる午後を泣いた日

031:大人 大人しい女の明日は優しくてあさつてに泣く白き冬薔薇

032:詰  思ひ詰め春怨といふ寂しさに海とほく見る三月の青

035:むしろ 近くよりむしろ遠くで感じたきダリの絵かかる壁のうす闇

036:右 右心房つたふ命が鼓動する君去る朝を淡雪の降る

037:牙 老獣の朽ちても残る象牙とふ身飾るものの一つに数ふ

038:的 身のうちを劇情的とふ鬼奔る青ざむ月のひかりが怖い

041:喫 一番茶満喫したる初夏の光が青く身ぬち降りつむ

043:輝 輝くを愛(かな)しと思ひし青春の一ページなる夏の高原

045:罰 「罪と罰」夜を徹して耽りしは現し世の波知らぬ若き日

051:囲 蜘蛛の囲に捲かれて黙す黒蝶の魂なるか夕星(ゆふづつ)の燃ゆ

052:世話 為尽くした世話の哀しも逝く姑(はは)のまくら灯揺らし春の雨降る

056:晩 晩春の水の感触しづくして眠りを覚ます日曜の午後

057:紐 帯紐を結ぶ指より白い冬 夕べ雪降る石段を踏む

058:涙 からつぽの部屋と涙と思ひ出の真中に遠い冬日射しこむ

059:貝 貝殻のくくむ潮騒耳に当て児らは知りたる夏の終はるを

060:プレゼント プレゼント姉と見せ合ふ縁側に亡母(はは)の幻影見しはあの夏

063:久しぶり 遠い恋 久しぶりねと見つめあふ二人の夏はいつか来た海

067:鎖 水の緒の纏ふひかりは鎖とも 視界を離(さか)る冬の陽炎

068:巨 ふるさとの記憶の銀杏巨きくて小(ち)さき素足で踏みし夕焼け

070:芸 芸の道、はた美意識の中に置くバレエ‐シューズの蒼きゆふぐれ

072:狭 狭量と言はれ鬱なる数日を季の移ろひて櫻雨降る

073:庫 お文庫に帯を結んで踏む秋の色なき風に身を委ねをり

076:桃 櫻桃(さくらんばう)ふふみ木蔭の揺り椅子に六月の夢揺らしてをりぬ

078:査 診査する臓器の触るる脈動に耳透かしをり遠く雪降る

079:帯 帯すでに解きしのちの後悔がとほく蒼ばむ 冬の潮騒

080:たわむれ たはむれの恋に春雨降る朝へひとひら白き終止符の降る

081:秋 紅葉を映せる水の静寂を秋思と思ひつ渡る回廊

082:苔 木洩れ日の揺らめきのなか滴れる苔のみどりに心染まりき

085:甲 掌(て)の甲を翳せば白く影ろひて雪降るらしき雲の落ちくる

086:片 一片(ひとひら)の雲のゆくへに恋ふる秋 わたしの風がもう吹いてゐる

087:チャンス あの夏のチャンスに賭けた一世(ひとよ)なれ 百合の木たかき空が恋しい

093:条件 この条件(くだり)違(たが)へぬ恋の誓ひとふ浜木綿の丘返す春濤

094:担 大原女(おはらめ)の担ぐ花籠懐かしく八十八夜の風に吹かれぬ

096:拭 イメージを払拭したき鏡台に映る明日の素顔、寒紅

098:激 激動の時代を生きて墳墓たる父なる海に咲く寒櫻



百人一首に採って頂いた短歌

035:むしろ

(みずき) 近くよりむしろ遠くで感じたきダリの絵かかる壁のうす闇

今年もこんなに沢山採って頂き有難うございます。とても嬉しいです!
百人一首に採って頂いた歌、ほんと自分ながら佳く詠めてる、なんて~~


 

選歌された短歌(2012題詠)

 投稿者:みずき  投稿日:2012年12月 6日(木)12時18分34秒
  ケンイチ様十首選
001:今   今を急く時間(とき)も心も雪のなか白き夕べのなほ遙かなる

013:逆   逆光のなかの私は消えさうな玻璃の指紋をなぞり確かむ

015:図書  図書室をひかりが奔り少年は黙す指(および)を透かしつつ読む

032:詰   思ひ詰め春怨といふ寂しさに海とほく見る三月の青

039:蹴   水を蹴る鳥の啼きゐしあかときが湖(うみ)の底まで青く降りたる

056:晩   晩春の水の感触しづくして眠りを覚ます日曜の午後

062:軸   花軸よりあぢさゐの海広ごりて人来ぬ夜を静かに濡らす

078:査   診査する臓器の触るる脈動に耳透かしをり遠く雪降る

085:甲   掌(て)の甲を翳せば白く影ろひて雪降るらしき雲の落ちくる

093:条件  この条件(くだり)違(たが)へぬ恋の誓ひとふ浜木綿の丘返す春濤


麦太郎さまの七首選

019:そっくり
過去の恋そしてけふ又そつくりな恋に落ちたる木漏れ日のなか

029:座
奔放な春がまた来て座るべき脚が見えない 陽炎のなか

☆041:喫
一番茶満喫したる初夏の光が青く身ぬち降りつむ

054:武
八月の蝉しきりなる武蔵野に降らない雨の憂鬱が過ぐ

071:籠
籠に臥す鳥に日差しの優しくてるるると低く響く春愁

084:西洋
西洋は遠くにありて近き街 異人館とふ神戸の春は

086:片
一片(ひとひら)の雲のゆくへに恋ふる秋 わたしの風がもう吹いてゐる


  採り上げて頂き有難うございます。とても嬉しく励みになります。
 

題詠100首ブログ2012より

 投稿者:みずき  投稿日:2012年 3月 4日(日)11時26分12秒
  001:今 今を急く時間(とき)も心も雪のなか白き夕べのなほ遙かなる

002:隣 隣人の背丈がすいと伸びた朝 雪晴れの天降りそそぐなり

003:散 散る櫻(はな)のあはひに佇ちて翳みゆく調べのやうな宙の優しさ

004:果 果てしなき空の彼方にある未来 黒蝶の舞ふ夢を見てゐる

005:点 この図面点で始まり国境の描線ひきて無為なる夕日

006:時代 時代屋の角に櫻は降りつもり褪せゆく皓を黄砂に換へぬ

007:驚 驚しき報せに落とす携帯の闇の拡がり春を消したる

008:深 深大寺そこから先は見えぬ貌(かほ)夢まぼろしと消えし初恋

009:程 程もなく櫻(はな)散らす風あはあはとくれなゐ暈けて雨のやうなる

010:カード カード切る女は白きユトリロの世界に棲むや春の雨降る

011:揃 晩秋と思へど揃へし白菊の切り口寒く鉢に盛りたる

012:眉 眉けぶる春の鏡のまへに佇ち輝きし日を呟いてゐる

013:逆 逆光のなかの私は消えさうな玻璃の指紋をなぞり確かむ

014:偉 偉大なるあの日の君はもうゐない冷気のなかに浮かぶ笹舟

015:図書 図書室をひかりが奔り少年は黙す指(および)を透かしつつ読む

016:力 力まずに過ごす日日なれ 人生を賭けた遠い日思ふ晩春

017:従 従へぬ理由の間(あひ)を降る雨が睫毛を濡らす海いろの玻璃

018:希 快復を希(ねが)ふある日を下がる熱また夢をみる明日を眠れり

019:そっくり 過去の恋そしてけふ又そつくりな恋に落ちたる木漏れ日のなか

020:劇 惨劇をまざまざと見し三月の脳(なづき)真白く震へし記憶

021:示 迷ひゐし我が道示す光あり モネの睡蓮あをく見つめぬ

022:突然 突然に事件(こと)は起こりてサイレンの響く夜半へ雪舞ひ踊る

023:必 必然か未然か狂ふ歳月は目を閉ぢ噎ぶ夜のなかなる

024:玩 姉さまと玩具競ひしあの日まで戻す記憶の螺子が捲けない

025:触 ふと触れて戸惑ふこころ階段の月の真中を君に寄り添ふ

026:シャワー 激しきはシャワーの音かすれ違ふこころに歎く君の嗚咽か

027:損 損傷のガラスを砕く春嵐のいつそ激しく当て所なき恋

028:脂 樹脂垂らす松の記憶が鮮明に少女のをはる午後を泣いた日

029:座 奔放な春がまた来て座るべき脚が見えない 陽炎のなか

030:敗 ライバルに敗れたのちの静寂がひしひし痛く踏みし薄ら氷

031:大人 大人しい女の明日は優しくてあさつてに泣く白き冬薔薇

032:詰  思ひ詰め春怨といふ寂しさに海とほく見る三月の青

033:滝 静謐を滝に転じた絵のやうな晩秋が好き ふつと呟く

034:聞 ふと聞きし噂に雪の降りつのる小さな恋の美しき白妙

035:むしろ 近くよりむしろ遠くで感じたきダリの絵かかる壁のうす闇

036:右 右心房つたふ命が鼓動する君去る朝を淡雪の降る

037:牙 老獣の朽ちても残る象牙とふ身飾るものの一つに数ふ

038:的 身のうちを劇情的とふ鬼奔る青ざむ月のひかりが怖い

039:蹴 水を蹴る鳥の啼きゐしあかときが湖(うみ)の底まで青く降りたる

040:勉強 勉強の成果を握る手の熱し 若さそれゆゑ大いなる夢

041:喫 一番茶満喫したる初夏の光が青く身ぬち降りつむ

042:稲 稲扱きの古き唄など口ずさび情熱たぎる夜を静めぬ

043:輝 輝くを愛(かな)しと思ひし青春の一ページなる夏の高原

044:ドライ ドライした髪をかろしと揺らす街 春愁の雨降らじたまゆら

045:罰 「罪と罰」夜を徹して耽りしは現し世の波知らぬ若き日

046:犀 木犀の匂ひ零るる朝の宙 夢のやうなる秋の吐息す

047:ふるさと ふるさとに置いてけ堀のお人形 浴衣で涼む夕べありしも

048:謎 謎めきし微笑に生るるモナリザの永遠を思ふ三月の雪

049:敷 花むしろ敷きて遠のく陽炎を仄かに揺らす櫻(はな)の中なる

050:活 しまらくは牡丹の世界 活き活きと雪に擡げる顔(かんばせ)の美し

051:囲 蜘蛛の囲に捲かれて黙す黒蝶の魂なるか夕星(ゆふづつ)の燃ゆ

052:世話 為尽くした世話の哀しも逝く姑(はは)のまくら灯揺らし春の雨降る

053:渋 渋皮の剥けてし女艶めいてけふの髪梳く櫻咲く午後

054:武 八月の蝉しきりなる武蔵野に降らない雨の憂鬱が過ぐ

055:きっと きつとある極楽浄土 身に降りし冷気も雪も清らに愛し

056:晩 晩春の水の感触しづくして眠りを覚ます日曜の午後

057:紐 帯紐を結ぶ指より白い冬 夕べ雪降る石段を踏む

058:涙 からつぽの部屋と涙と思ひ出の真中に遠い冬日射しこむ

059:貝 貝殻のくくむ潮騒耳に当て児らは知りたる夏の終はるを

060:プレゼント プレゼント姉と見せ合ふ縁側に亡母(はは)の幻影見しはあの夏

061:企 青春の企画は密で爽らかなあの日の沈丁花(ぢんちやう)けふも匂ひぬ

062:軸 花軸よりあぢさゐの海広ごりて人来ぬ夜を静かに濡らす

063:久しぶり 遠い恋 久しぶりねと見つめあふ二人の夏はいつか来た海

064:志 木も土も春となりたる朧踏み勇志の櫻凛と咲かさむ

065:酢 酢のものも酒も仄かな恋の味 櫻蕊降る春の悲しみ

066:息 息継ぎの涸れゆく命 追憶のかなた劇しき君の息聴く

067:鎖 水の緒の纏ふひかりは鎖とも 視界を離(さか)る冬の陽炎

068:巨 ふるさとの記憶の銀杏巨きくて小(ち)さき素足で踏みし夕焼け

069:カレー カレー皿洗ふ指より点るらし雪降る夜の白き翳ろひ

070:芸 芸の道、はた美意識の中に置くバレエ‐シューズの蒼きゆふぐれ

071:籠 籠に臥す鳥に日差しの優しくてるるると低く響く春愁

072:狭 狭量と言はれ鬱なる数日を季の移ろひて櫻雨降る

073:庫 お文庫に帯を結んで踏む秋の色なき風に身を委ねをり

074:無精 無精とふ一日(ひとひ)の中に毀れゆく感性、秩序、私の時間

075:溶 降る雪に溶けゆく樹影 掻き消ゆる声も真白にとほく降りたる

076:桃 櫻桃(さくらんばう)ふふみ木蔭の揺り椅子に六月の夢揺らしてをりぬ

077:転 転転と冬点したる街路樹のあはひも宙もクリスマスなる

078:査 診査する臓器の触るる脈動に耳透かしをり遠く雪降る

079:帯 帯すでに解きしのちの後悔がとほく蒼ばむ 冬の潮騒

080:たわむれ たはむれの恋に春雨降る朝へひとひら白き終止符の降る

081:秋 紅葉を映せる水の静寂を秋思と思ひつ渡る回廊

082:苔 木洩れ日の揺らめきのなか滴れる苔のみどりに心染まりき

083:邪 邪気すでに微熱を孕む身のうちへ黎明の息ふかく吸ひたる

084:西洋 西洋は遠くにありて近き街 異人館とふ神戸の春は

085:甲 掌(て)の甲を翳せば白く影ろひて雪降るらしき雲の落ちくる

086:片 一片(ひとひら)の雲のゆくへに恋ふる秋 わたしの風がもう吹いてゐる

087:チャンス あの夏のチャンスに賭けた一世(ひとよ)なれ 百合の木たかき空が恋しい

088:訂 訂正の朱筆を入れてほの咲ける白百合の香に耳を澄ませり

089:喪 喪失の春と思ひゐし 地震(なゐ)に泣く人のあしたの勇気、それから

090:舌 舌切草(したきさう)泡だつ午後の眩しさを激しき夏と思ひつ下りぬ

091:締 凧糸を締めて漲る天空の力を知れり蝋梅の午後

092:童 童歌(わらべうた)忘れし過去の夕闇へ耳欹てつうたた恋しき

093:条件 この条件(くだり)違(たが)へぬ恋の誓ひとふ浜木綿の丘返す春濤

094:担 大原女(おはらめ)の担ぐ花籠懐かしく八十八夜の風に吹かれぬ

095:樹 黎明に樹海横たふ女ゐてその生涯を濡らす春雨

096:拭 イメージを払拭したき鏡台に映る明日の素顔、寒紅

097:尾 尾道に生れし女流の「放浪記」 夢のかなたに過去が揺らめく

098:激 激動の時代を生きて墳墓たる父なる海に咲く寒櫻

099:趣 ゆるらかに咲くゆふがほの趣きは夏の抒情詩描く夕闇

100:先 風花の舞ひつる先は春の海遙かな沖に海猫の啼く


 

西中真二郎さま選(2011)

 投稿者:みずき  投稿日:2012年 2月 2日(木)10時29分47秒
編集済
  003:細  蝶翅と揺れゐる蘭の細やかな風の行方か海の遠鳴る

004;まさか 敗戦をまさかと思ひし遠き日と同じ空なる八月の青

009:寒  悴みてふるふる寒き風音のあはひへ堕つる白き冬空

011:ゲーム  ゲーム器に孤独の指を遊ばせて五歳はけふも丸き目をする

012:堅  帯紐の堅さに凛と伸ばす背 春のうららを踏みて祇王寺

013:故  さよならも何故も染めたる夕焼けへ葬る過去の小さき抗ひ

014:残 残像と生るる樹影のそよ吹きて亡父のこゑを探す夏の夜

017:失 失ひし総て数ふる手のひらに愛の欠落きりきりとあり

020:幻  幻想を科学に変へて青き薔薇 雪降る春に咲くかあしたは

021:洗  洗剤にふはりと浮かぶ裸身ゆゑ冬陽炎と消えて真夜なる

022:でたらめ でたらめな政治に壊れゆく街へ冬の木の実の熟しゆくなり

023:蜂  かの国の蜂の巣族とふ傷ましきやつれし夢へとほき国境

024:謝  謝肉祭、誕生日なる姉逝きて尚とほくなる南欧の空

025:ミステリー 真夜のかほ映す鏡のミステリー死よりも蒼く壁に浮かべり

028:説  解説は滅びの美学キャスターの睫毛を濡らし小糠雨ふる

031:電  電飾の点る季節の端にゐてナショナリズムをふと思ひをり

038:抱 抱擁は明日なき夢に青褪めし手のひらだけの遠き思ひ出

041:さっぱり さつぱりと捨てたき恋へ遠き雪山峡に降りこの玻璃に降る

042:至 この瀧へ至りて風が雪になる肉汁熱き宿を尋ねり

044:護  護りえず水になりたる命あり小さき地蔵に春の雨降る

046:奏 CDの奏づる「愛の喜び」に少年は酔ひ少女は眠る

047:態 密やかに花の媚態のなかにゐて櫻暈かしの白き頬なる

050:酒  甘酒をくくむは竹箸一本と混ぜし記憶に海が啼いてる

051:漕 湖に溢れる空を春へ漕ぐ捨つる夢さへ狂ほしき青

052:芯 菜の芯のレシピをどうぞ真つ白な春の器に檸檬を搾る

056:摘 摘み草の指の感触やさしくて羽毛のやうな春光を浴ぶ

057:ライバル   青春の日溜まり翳るライバルの髪の追憶 振り向けば春

060:直  乾きゐし舌の奥処に知る冬のひかり真直ぐに床へ伸びたる

058:帆  帆のゆくへ見えずたゆたふ春風へ心の涙そつと偲ばす

068:コットン コットンと止まる列車は櫻(はな)のなか吉野山(よしの)の春へ人あふれゆく

061:有無 有無といふ小寒きことば曖昧を許さぬ春が俄かに暮れぬ

062:墓 潤(ほと)びれし木の葉に消ゆる墓碑銘が春の麗らにほうと浮かびぬ

063:丈 野仏の視界さへぎる丈の竹ざははと鳴りて笹の雨降る

065:羽 円形に黒き羽舞ふ落日をダリと思ひゐし私の真冬

067:励 励ましの手紙へ潤む目に耳に舞ひては溶ける三月の雪

069:箸 箸置きのスワンが泳ぐ陽光を春と思ひつつふふむチャウダー

070:介 厄介な揉め事つづく晩春へ背(そびら)を還す二人のペーゼ

073:自然 移ろふは自然か恋か春愁へ見え隠れする月の儚さ

076:ツリー 贈られしフラワーツリーの囁きを雪舞ふ玻璃へそぞろ飾りぬ

077: 狂 狂ひたる季節へ花の乱れ咲き政変前夜の潮騒を聴く

078:卵  卵抱く燕は駅舎の天井にけふも去年も四月を棲みぬ

085:フルーツ フルーツを乱切りにして角ごとの秋を味はふ一人の夜は

086:貴 「貴(たふと)びて我は逝くなり憂国を」耳に残れるあの日、戦時下

083:溝 溝越えて春の真中を翔けぬけんポンチョの煽るさよならの風

087:閉 春閉づる扉もノブも吾が心 指紋をつけぬ朝がまた来る

090:そもそも そもそもと言ひて黙(もだ)せる師の癖を挿むページを閉ぢて春なる

094:裂 地の裂けて死の街と化す阪神の過去へ揺れゐる陽炎のあり

095:遠慮 遠慮しつ始めて継母(はは)に抱かれたる五歳の冬のとほき潮騒

089:成  十八の春の成績額にして幾夜ひさしき春の憂鬱

098:味  味けなき日日のあはひの愚かさを激する心玻璃に映せり

100:完  完璧に活けたる菊の寂しさを秋思と思ひつ歌集捲りぬ


「番外の歌」

黒づみし海に盛らるる断片を鏡の如く春は照らせり

惨き日日春へとつづく岡に佇ち咲かぬ櫻と海鳴りを聴く

壊れゐし街へのたりと春の海 過ぐる季節へ櫻(はな)が咲いてる

惨劇のあとは風舞ふ哀しみの口笛ばかり聴こえ、潮騒


今回もこれほど選んで頂き嬉しく光栄です。
もう2012年題詠が始まって~~月日の経つ速さに驚かされます。上手く詠めるといいけど・・・・・
 

題詠100首ブログ2011より

 投稿者:みずき  投稿日:2011年 3月15日(火)22時55分5秒
編集済
  001:初 初恋は淡雪の朝ふるふると玻璃へ夢幻の世界映しつ

002:幸 身の不幸思ひつつ透かす鏡中にあの日の我の愛しき微笑み

003:細 蝶翅と揺れゐる蘭の細やかな風の行方か海の遠鳴る

004:まさか 敗戦をまさかと思ひし遠き日と同じ空なる八月の青

005:姿 容姿から零れる華よ三月の壁に懸かりて仄かなるパリ

006:困 困惑と激しき夏と越えてけふ人は叫べり「ピース・ワンモア」

007:耕 耕せば土こんもりと春になる椿花びら落ちてもう夏

008:下手 口下手の憂鬱脱ぎて春を見ん液晶に打つ愛と零の字

009:寒   悴みてふるふる寒き風音のあはひへ堕つる白き冬空

010:駆   疾駆する犬の庭なれ故里の柿栗の実と 姉弟と

011:ゲーム ゲーム器に孤独の指を遊ばせて五歳はけふも丸き目をする

012:堅 帯紐の堅さに凛と伸ばす背(せな)春のうららを踏みて祇王寺

013:故  さよならも何故も染めたる夕焼けへ葬る過去の小さき抗ひ

014:残 残像と生るる樹影のそよ吹きて亡父のこゑを探す夏の夜

015:とりあえず とりあへず寂しむこころ掬ひあげ詠むは怠心か春燈を掲ぐ

016:絹 ほらほらと生絹(すずし)のころも纏ひゐし乙女ぞ青き恋に堕ちたる

017:失  失ひし総て数ふる手のひらに愛の欠落きりきりとあり

018:準備 準備なき心に終はるこの恋の微熱となりて部屋に転がる

019:層 高層へ降る雪青し吹かれては羽虫の如く燈(とぼし)に打たれ

020:幻 幻想を科学に変へて青き薔薇 雪降る春に咲くかあしたは

021:洗 洗剤にふはりと浮かぶ裸身ゆゑ冬陽炎と消えて真夜なる

022:でたらめ でたらめな政治に壊れゆく街へ冬の木の実の熟しゆくなり

023:蜂 かの国の蜂の巣族とふ傷ましきやつれし夢へとほき国境

024:謝 謝肉祭、誕生日なる姉逝きて尚とほくなる南欧の空

025:ミステリー 真夜のかほ映す鏡のミステリー死よりも蒼く壁に浮かべり

026:震  激震のあと渇水に喘ぐ群れ縷縷とつづきて天に昇れる

027:水  水争ひ切実なるか新興の国国満ちて緯度の傾く

028:説  解説は滅びの美学キャスターの睫毛を濡らし小糠雨ふる

029:公式 公式の法則とけず喪ひし数値となりてこころ騒めく

030:遅  遅櫻淋しき人の姿とも傘に消えたる影の老ひゆく

031:電  電飾の点る季節の端にゐてナショナリズムをふと思ひをり

032:町 生れし町他人の燈し掲げたる家へシェパード駆けてゆくなり

033:奇跡 生きるとは躓くことと知りつつも奇跡を信じ動けぬ私

034:掃 掃除する二本の腕は配線のグレーとなりて壁に凭れり

035:罪 罪深きをんな顕れ疾く過ぎる童話の世界に棲みて少女は

036:暑 酷暑から蝉は落ちたる裸木の樹齢したたる水の真中へ

037:ポーズ ポーズとる君は幼きナルシスト未熟な笑みで科を作りぬ

038:抱  抱擁は明日なき夢に青褪めし手のひらだけの遠き思ひ出

039:庭 我が庭は遠く微かに栗拾ふ姿見えたる佇むは亡父(ちち)?

040:伝 そののちを病みてゐるとふ伝へ聞く水の緒丸く孤独浸しぬ

041:さっぱり さつぱりと捨てたき恋へ遠き雪山峡に降りこの玻璃に降る

042:至  この瀧へ至りて風が雪になる肉汁熱き宿を探せり

043:寿  喜寿美しき女であらめ月光の髪を梳きゆくステージに立ち

044:護 護りえず水になりたる命あり小さき地蔵に春の雨降る

045:幼稚 朝顔の角をあふげば幼稚園過ぎゆく日日の蔓巻かれをり

046:奏 CDの奏づる「愛の喜び」に少年は酔ひ少女は眠る

047:態 密やかに花の媚態のなかにゐて櫻暈かしの白き頬なる

048:束 束の間の日差しも消さん豪雪に透き通るほど凍つる我がこゑ

049:方法 和箪笥に仕舞ふ方法 畳紙(たたうがみ)昭和の紙魚の薄ら残れる

050:酒 甘酒をくくむは竹箸一本と混ぜし記憶に海が啼いてる

051:漕 湖に溢れる空を春へ漕ぐ捨つる夢さへ狂ほしき青

052:芯 菜の芯のレシピをどうぞ真つ白な春の器に檸檬を搾る

053:なう 君が背なうそ寒き夜の象してメールに探す優しき拒絶

054:丼 天守から丼池(どぶいけ)筋へと春のゆく櫻に翳む異次元の街

055:虚 花首の落つると見えて虚ろなるわたしの椿雨に打たれぬ

056:摘 摘み草の指の感触やさしくて羽毛のやうな春光を浴ぶ

057:ライバル 青春の日溜まり翳るライバルの髪の追憶 振り向けば春

058:帆 帆のゆくへ見えずたゆたふ春風へ心の涙そつと偲ばす

059:騒 騒がしき時代の海へゆく春の虚木(うつほぎ)たふれ鎮む たまゆら

060:直  乾きゐし舌の奥処に知る冬のひかり真直ぐに床へ伸びたる

061:有無 有無といふ小寒きことば曖昧を許さぬ春が俄かに暮れぬ

062:墓 潤(ほと)びれし木の葉に消ゆる墓碑銘が春の麗らにほうと浮かびぬ

063:丈 野仏の視界遮る丈の竹ざははと鳴りて笹の雨降る

064:おやつ ひと欠けのおやつが築く蟻塚に生れし黒蝶夏を舞ひたる

065:羽 円形に黒き羽舞ふ落日をダリと思ひゐし私の真冬

066:豚 豚骨のスープ華やぐこゑと声 過ぎし青春つどひて麗ら

067:励 励ましの手紙へ潤む目に耳に舞ひては溶ける三月の雪

068:コットン コットンと止まる列車は櫻(はな)のなか吉野の春へ人あふれゆく

069:箸 箸置きのスワンが泳ぐ陽光を春と思ひつつふふむチャウダー

070:介 厄介な揉め事つづく晩春へ背(そびら)を還すふたりのぺーゼ

071:謡 薪能、謡怪しき夜に痴れつ梅の香にほふ家紋あふぎぬ

072:汚 騒音は薔薇の汚れか白きもの全て真白き冬の静寂

073:自然 移ろふは自然か恋か春愁へ見え隠れする月の儚さ

074:刃 刃は月に森羅万象身のうちを射して潤ぶるこころ象る

075:朱 朱を挿した絵画の降らす春雪に足跡消され漂ふふたり

076:ツリー 贈られしフラワーツリーの囁きを雪舞ふ玻璃へそぞろ飾りぬ

077:狂 狂ひたる季節へ花の乱れ咲き政変前夜の潮騒を聴く

078:卵 卵抱く燕は駅舎の天井にけふも去年も四月を棲みぬ

079:雑 雑といふ感覚ばかり先奔る春の駅舎に探す感性

080:結婚 結婚を判断力の欠如てふ女はけふも赤き髪梳く

081:配 この海に散りてし櫻(はな)の残骸か配流の島へ白く泡立つ

082:万 万感に凝りて仮面となりし貌 女に換へてけふを泣きたる

083:溝 溝越えて春の真中を翔けぬけんポンチョの煽るさよならの風

084:総 総て夢こころに愛の風穴がぽつかり浮かび春を喪ふ

085:フルーツ フルーツを乱切りにして角ごとの秋を味はふ一人の夜は

086:貴「貴(たふと)びて我は逝くなり憂国を」耳に残れるあの日、戦時下

087:閉 春閉づる扉もノブも吾が心 指紋をつけぬ朝がまた来る

088:湧 湧き水の煽る都会の宙美しく光溢れて水へ落ちゆく

089:成 十八の春の成績額にして幾夜ひさしき春の憂鬱

090:そもそも そもそもと言ひて黙(もだ)せる師の癖を挿むページを閉ぢて春なる

091:債 債券を売らむと決めし携帯の感触冷ゆる春に凭れぬ

092:念 春蘭へ念(おも)ひ激しき翅を打つ胡蝶とあらめ己がたましひ

093:迫 迫りくる足音(あのと)は遠き戦争かなほ中東の血の粛清か

094:裂 地を裂きて死の街と化す阪神の過去へ揺れゐる陽炎のあり

095:遠慮 遠慮しつ初めて継母(はは)に抱かれたる五歳の冬のとほき潮騒

096:取 取り取りの歳もて街を行く貌の青き憂ひを美少女といふ

097:毎 日毎増す喪失感の過ぎていま静かに想ふ天上の友

098:味 味けなき日日のあはひの愚かさを激する心玻璃に映せり

099:惑 翠なす海も心も傾きて加速度あげし恋に戸惑ふ

100:完 完璧に活けたる菊の寂しさを秋思と思ひつ歌集捲りぬ
 

西中真二郎さま選 50首(2010年)

 投稿者:みずき  投稿日:2010年12月16日(木)14時06分52秒
編集済
  001:春 さへづりの春冷えとなる静けさに命いくひら育つこの朝

002:暇 暇といふ時間を閉ざし弛びなき潮騒を聴く冬のをはる日

004:疑 疑ひは虚しきものとあの夏のこころ細やぐ海はもう無い

007:決 決心は風化したまま愛憎の季節の見えぬ青き目蓋(まなぶた)

010:かけら 傘を持つ少女の翔けて水溜まり飛ばすかけらに雨白く降る

011:青 青き日の情熱失せしけふを弾くなみなみ寄せる春の心よ

013:元気 元気とふ心かそけく雪の舞ふ青いろインクの寂しさのなか

015:ガール シャガールの絵筆を青く持つ指は青の時間を砥ぎ澄ましたる

017:最近 悲しみと夢を交互に最近の私がゐますなほ飛べぬまま

019:押 押し花はページのあはひ滑り落ち消えし約束白く象る

020:まぐれ 気まぐれな恋はゆらりと闇に咲くひとひら赤き冬さうびなる

023:魂 魂を震はす恋の夏ならむ打ちて還らぬ波に奔れり

025:環 冬涛の暗さに環かけせつせつと雪の波郷の遅き秒針

027:そわそわ そはそはと心艶めく午後を舞ふ冬蝶熱き恋の翅もち

028:陰 木陰から携帯の鳴る夕暮れはきつと拒絶と遠く思へり

030:秤 天秤に撥ねてし魚は魂のなかなる海に触れて黙(もだ)せり

036:正義 正義なる美しきもの翳しゐる政治 櫻(はな)咲く夢はもう見ぬ

038:空耳 春雷のとほき気配は空耳か真闇の夢と思(も)ひつまた寝(い)ぬ

043:剥  剥く指の先するすると滑りたるぺティナイフへ秋のジン酌む

045:群 群集をはぐれる怖さ水無月の記憶の底にひとり迷ひし

046:じゃんけん じゃんけんに負けた涙が夕光に浮かぶ 八月をさな日のこと

047:蒸 蒸し暑き夜のベッドの孤独とふ雨の囁きふつと跡絶えぬ

048:来世 愛の嘘のこし来世へ旅立ちし人へ手向けん刺ある緋薔薇

049:袋 掛けられし袋と戦ぐ葡萄園 熟度のほどに白き夏くる

052:婆 婆さまがスコッチを呑む日の短か 過去が息づくやうにしやべれる

054:戯 あの誓ひ戯れ言なるか朦朧と春の雪降る耳の哀しき

057:台所 竃吹く母ともおぼゆ台所 恋ほしき昔(かみ)の若きうなじは

058:脳 脳葉の重き霖雨へ開きゆく夕顔ほのと宙を濡らせり

059:病 熱病みてそぞろ欝なる早春をけざやかに舞ふ鳥の恋ほしき

060:漫画 そらそらと漫画惚けした指(および)もて午前のメール捲る日曜

062:ネクタイ ネクタイと指輪を外しかげろふの二人となりて夜を漂ふ

063:仏 冬ざれの野に石仏のほのと座すしぐれて光る柔きひとみよ

064:ふたご ふたご座も二人静も春愁の匂ひを放つふたひらの夢

065:骨 喉仏なき骨かろく傷ましき手術(オペ)の真実からから鳴れり

066:雛 雛流す後は無聊の部屋ならむ問ひて沙汰なき三人官女

067:匿名 匿名の電話のかもす不気味さが乱す然も無き日日のありやう

068:怒 怒濤なす海を見つめて逸れゆきし運命を思ふこゑ亡き父と

071:褪 褪せてゆく春の心よ散り急ぐ櫻ひとひら舞ひて真白き

074:あとがき あとがきの行間触るる風五月儚き恋をそよと閉ぢたる

077:対 谷崎の墓石は「寂」の一(ひと)もんじ 対峙する樹の櫻降りつむ

082:弾  悔いてなほ外せぬ指輪あはあはとゆるぶ晩夏を激しく弾きぬ

084:千 千の風吹かれて消ゆる笹舟の過ぎし川面に浮かぶ たまゆら

086:水たまり 紫陽花の闇に浮かびて水たまり昨日の雨に青く濡れゐし

087:麗  麗人はモディリアーニの細き首伏せて五月は鬱とささやく

088:マニキュア さよならと握手した日の寂しさを除光してゐる夜のマニキュア

090:恐怖 オペすれど癒えぬ恐怖に曝されて身ほとり深く春を探しぬ

091:旅  トンネルに耳奪はれしのちの雪 旅のはじめの海へ吹雪けり

095:黒 心奥(しんあう)へ秘めし苦悩に細りゆく黒髪 柘植の小櫛さしたる

096:交差 借りてきし傘窄めつつ交差点春の驟雨に弾けるみどり

100:福 福相と自負する人の寂しさをふと感じをり 太宰忌の庭



百人一首に採り上げて頂いた歌

(みずき)雛流す後は無聊の部屋ならむ問ひて沙汰なき三人官女



今回もこんなに採って頂き感激です。社会的にも、歌人としても素晴らしい方が、これ程選歌して下さる。本当に嬉しく、ただ感謝です。有難うございます。
 

選歌された歌(2010題詠)

 投稿者:みずき  投稿日:2010年12月16日(木)13時30分35秒
編集済
  《麦太郎さん選》

003:公園
公園に残る悲しび揺れ通す 昨夜(きそ)は真白き春のふらここ

028:陰
木陰から携帯の鳴る夕暮れはきつと拒絶と遠く思へり

048:来世
愛の嘘のこし来世へ旅立ちし人へ手向けん刺ある緋薔薇

050:虹
色のなき虹の幻影わたくしの世界にありて彩をつけゆく

063:仏
冬ざれの野に石仏のほのと座すしぐれて光る柔きひとみよ

☆072:コップ
泡立ちしコップの底ひ透明と薔薇交叉して女優去りゆく

083:孤独
薄ら氷(ひ)を踏みて孤独が悲鳴あぐ 師走の街はいま真つ盛り

格調高く、ていねいに詠まれた歌たち、楽しませていただきました。

☆の歌、
泡立つ飲み物、アルコールがいいですね。ハイボールかな?
そのコップを通して薔薇の絵柄のドレスを着た女優が行き過ぎるのを見ている。
映画のシーンのような、鮮やかな映像が浮かんできます。

083:孤独、の歌も良いですね。
真っ盛り、とまとめたところ、新鮮で面白いです。


《理阿弥さん選》

091:旅
  トンネルに耳奪はれしのちの雪 旅のはじめの海へ吹雪けり
085:訛
  訛り濃き女の黙(もだ)し因習に細ら雪降る郷のあれこれ
068:怒
  怒濤なす海を見つめて逸れゆきし運命を思ふこゑ亡き父と
052:婆
  婆さまがスコッチを呑む日の短か 過去が息づくやうにしやべれる
025:環
  冬涛の暗さに環かけせつせつと雪の波郷の遅き秒針

この海は北陸のでしたか。
私も寒季の富山の海を眺めたことがありますけど、
雪にはやっぱり日本海がふさわしい気がしますねぇ。

お父様を詠まれた他のお歌も胸に響きました。
私もみずきさんのように言葉を扱えるようになりたいのですが・・・


《鳥羽省三さん選》

009:菜 菜箸を紅筆に変へ女たる私を映す母の鏡に

100:福 福相と自負する人の寂しさをふと感じをり 太宰忌の庭

021:狐 ややあつて「狐の嫁入り」笑む母は着ぬまま逝きし羽織縫ひゐし

そうした中での「ややあつて『狐の嫁入り』笑む母は着ぬまま逝きし羽織縫ひゐし」という作品には、燦然と輝くものが在るのです。
 この作品には、作者の息吹きが感じられ、手垢が感じられるのです。
 あなた様を、私は、上手に詠もうと思えば、どんなに上手な作品でも詠めるお方と感じました。

身に余るお言葉の数々、感激です。自信に繋げこれからも詠み続けます。有難うございます。


 

題詠100首ブログ2010より

 投稿者:みずき  投稿日:2010年 5月 8日(土)21時53分59秒
  001:春 さへづりの春冷えとなる静けさに命いくひら育つこの朝

002:暇 暇といふ時間を閉ざし弛びなき潮騒を聴く冬のをはる日

003:公園 公園に残る悲しび揺れ通す 昨夜(きそ)は真白き春のふらここ

004:疑 疑ひは虚しきものとあの夏のこころ細やぐ海はもう無い

005:乗 潮騒の町乗り継げばつと燃ゆるミステリアスな海のゆふやけ

006:サイン サインペン 雰囲気かもす君ゆゑになほ細くなる英字が見えぬ

007:決 決心は風化したまま愛憎の季節の見えぬ青き目蓋(まなぶた)

008:南北 南北に伸びたロードの端は夏 藍のいろ為す北は海峡

009:菜 菜箸を紅筆に変へ女たる私を映す母の鏡に

010:かけら 傘を持つ少女の翔けて水溜まり飛ばすかけらに雨白く降る

011:青 青き日の情熱失せしけふを弾くなみなみ寄せる春の心よ

012:穏 穏やかな心の傷と臥すベッド手探りで思ふ事の輪郭

013:元気 元気とふ心かそけく雪の舞ふ青いろインクの寂しさのなか

014:接 密接と品格の間(あひ)降る雪の激しきさまに君は泣きたる

015:ガール シャガールの絵筆を青く持つ指は青の時間を砥ぎ澄ましたる

016:館 崩壊の館にローマの雨の降る耳そばだてつ古代史を行く

017:最近 悲しみと夢を交互に最近の私がゐますなほ飛べぬまま

018:京 京洛は雪に浮かびし塔のなか人形のよな女(ひと)の眼と合ふ

019:押 押し花はページのあはひ滑り落ち消えし約束白く象る

020:まぐれ 気まぐれな恋はゆらりと闇に咲くひとひら赤き冬さうびなる

021:狐 ややあつて「狐の嫁入り」笑む母は着ぬまま逝きし羽織縫ひゐし

022:カレンダーカレンダー淋しき明日の嘘へ繰る耳かたひらに蝉啼く真夜

023:魂 魂を震はす恋の夏ならむ打ちて還らぬ波に奔れり

024:相撲 相撲より生るる気魂のどよめきて卯の花腐す夜となりける

025:環 冬涛の暗さに環かけせつせつと雪の波郷の遅き秒針

026:丸 蝶翅を丸ごと吊るす蜘蛛ならん春のひかりを囲と紡ぎゐし

027:そわそわ そはそはと心艶めく午後を舞ふ冬蝶熱き恋の翅もち

028:陰 木陰から携帯の鳴る夕暮れはきつと拒絶と遠く思へり

029:利用 利用とふ小物入れとも財布とも亡母(はは)の小袖を断ちて春なる

030:秤 天秤に撥ねてし魚は魂のなかなる海に触れて黙(もだ)せり

031:SF SFを閉ぢてし君は睡蓮の濡るる瞳を空に浮かせり

032:苦 苦しきは恋の温度差悔やむ日日とほく流れてなほ微熱なる

033:みかん 飾られしトロンプ・ルイュみかん見ゆ北欧風に点るそのいろ

034:孫 孫の指白もくれんに触れて春 ひとひら水の谺し浮かぶ

035:金 金のものあやに供出せし母の戦争もはや生らぬ野葡萄

036:正義 正義なる美しきもの翳しゐる政治 櫻(はな)咲く夢はもう見ぬ

037:奥 庵奥(あんあう)へ歩ごと涼しき嵯峨の竹ささら結びぬ恋の束(つか)ね緒

038:空耳 春雷のとほき気配は空耳か真闇の夢と思(も)ひつまた寝(い)ぬ

039:怠 怠惰なる日日は翳みて十日(とほか)なる見えない夢を探す曙

040:レンズ 夏の川透かす光のレンズから生れてし鯉の跳ぶ瀧しぶき

041:鉛 鉛だく心重たき春にゐてつひに極まるこの恋のこと

042:学者 春風の乱せる髪も学者たる夢ぞ 大河の海へ傾れん

043:剥  剥く指の先するすると滑りたるぺティナイフへ秋のジン酌む

044:ペット 豹紋のペットが駆けてにはたづみ 丸く転がるひかりとなりき

045:群 群集をはぐれる怖さ水無月の記憶の底にひとり迷ひし

046:じゃんけん じゃんけんに負けた涙が夕光に浮かぶ 八月をさな日のこと

047:蒸 蒸し暑き夜のベッドの孤独とふ雨の囁きふつと跡絶えぬ

048:来世 愛の嘘のこし来世へ旅立ちし人へ手向けん刺ある緋薔薇

049:袋 掛けられし袋と戦ぐ葡萄園 熟度のほどに白き夏くる

050:虹 色のなき虹の幻影わたくしの世界にありて彩をつけゆく

051:番号 多すぎる薬に番号ふりてより喉(のみど)に残る幽けき甘さ

052:婆 婆さまがスコッチを呑む日の短か 過去が息づくやうにしやべれる

053:ぽかん ぽかん空く心に夢を埋めたし空回りするけふの悔しさ

054:戯 あの誓ひ戯れ言なるか朦朧と春の雪降る耳の哀しき

055:アメリカ アメリカへ発ちし刹那を降る雨の君を翳めり さよならの旅

056:枯 枯れてなほ心みづみづしき人よ執着の海失せて羞しも

057:台所 竃吹く母ともおぼゆ台所 恋ほしき昔(かみ)の若きうなじは

058:脳 脳葉の重き霖雨へ開きゆく夕顔ほのと宙を濡らせり

059:病 熱病みてそぞろ欝なる早春をけざやかに舞ふ鳥の恋ほしき

060:漫画 そらそらと漫画惚けした指(および)もて午前のメール捲る日曜

061:奴 奴が来る春の真ん中泥んこの愛のテンションしかと見据えむ

062:ネクタイ ネクタイと指輪を外しかげろふの二人となりて夜を漂ふ

063:仏 冬ざれの野に石仏のほのと座すしぐれて光る柔きひとみよ

064:ふたご ふたご座も二人静も春愁の匂ひを放つふたひらの夢

065:骨 喉仏なき骨かろく傷ましき手術(オペ)の真実からから鳴れり

066:雛 雛流す後は無聊の部屋ならむ問ひて沙汰なき三人官女

067:匿名 匿名の電話のかもす不気味さが乱す然も無き日日のありやう

068:怒 怒濤なす海を見つめて逸れゆきし運命を思ふこゑ亡き父と

069:島 島を経て島へ渡らん琉球の夜は朧ろな月を踏みてし

070:白衣 白衣着し研究室は青春のページ野生に群れゆ輩(ともがら)

071:褪 褪せてゆく春の心よ散り急ぐ櫻ひとひら舞ひて真白き

072:コップ 泡立ちしコップの底ひ透明と薔薇交叉して女優去りゆく

073:弁 弁論の輪に入れなきわたくしの心象満たす拒絶反応

074:あとがき あとがきの行間触るる風五月儚き恋をそよと閉ぢたる

075:微 クーラーの微音に揺らぐ眠りとふ耳を震はすベルもまた夢

076:スーパー スーパーのレジを離れて踏む泥土ぬるむ春暮の力知りたる

077:対 谷崎の墓石は「寂」の一(ひと)もんじ 対峙する樹の櫻降りつむ

078:指紋 この薄き葉裏の指紋 冬蝶となりゆくさまに雨の奔りぬ

079:第 第五聴くネットのかなた若き日の美しき苦悩がふと蘇へる

080:夜 夜行せし日日は遠かり運命の解れぬままに外せぬ仮面

081:シェフ フレンチの抑揚美しきシェフのこゑ海に向かひて二人、方舟(はこぶね)

082:弾  悔いてなほ外せぬ指輪あはあはとゆるぶ晩夏を激しく弾きぬ

083:孤独 薄ら氷(ひ)を踏みて孤独が悲鳴あぐ 師走の街はいま真つ盛り

084:千 千の風吹かれて消ゆる笹舟の過ぎし川面に浮かぶ たまゆら

085:訛 訛り濃き女の黙し因習に細ら雪降る郷のあれこれ

086:水たまり 紫陽花の闇に浮かびて水たまり昨日の雨に青く濡れゐし

087:麗  麗人はモディリアーニの細き首伏せて五月は鬱とささやく

088:マニキュア さよならと握手した日の寂しさを除光してゐる夜のマニキュア

089:泡 泡沫(うたかた)の日日もリアルも啄ばみて私のなかに棲みつく小鳥

090:恐怖 オペすれど癒えぬ恐怖に曝されて身ほとり深く春を探しぬ

091:旅  トンネルに耳奪はれしのちの雪 旅のはじめの海へ吹雪けり

092:烈  ヒロインの烈になりきり激しくも「蔵」の世界に夜を徹しをり

093:全部 全部とは無とも哀しき空間に身ぬち魂投げて泣く夜は

094:底 底のない砂地に触れて溺れゆく蟻の残せし一本の百合

095:黒 心奥(しんあう)へ秘めし苦悩に細りゆく黒髪 柘植(つげ)の小櫛さしたる

096:交差 借りてきし傘窄めつつ交差点春の驟雨に弾けるみどり

097:換  ドル換への午後を奔りてブルーなる気分放りし海は二ん月

098:腕  腕重き朝に目覚めて春の夢のこる目蓋うすら閉ぢたる

099:イコール イコールは既にかき消え破りたるノートはさやに疑問符の渦

100:福 福相と自負する人の寂しさをふと感じをり 太宰忌の庭



049:袋 声失くす癌と闘ひ痩せし父 喉穴おほふガーゼの袋
 

選歌された歌(2009題詠)

 投稿者:みずき  投稿日:2010年 5月 8日(土)21時50分52秒
     《麦太郎さん選》

耳鳴りは敗北感のあと曳きて一日(ひとひ)怪しく我を揺さぶる

髪型をそくそく変へて逝く夏の鼓動を君に重ね聴きゐし

秩序なき街に降りくる雪乱れ人型白く消ゆる たまゆら

わさびの香くらりと沁みる眼間(まなかひ)へ初冬の光いつそ明るし

角といふ角に不安の溢れゐて真中に置きし夜の携帯

アンコール痺れる程にしたのちの転調といふ夜の陶酔

みずきさんの歌、格調高くて、綺麗な言葉が織り込まれていて錦のようです。

《久哲さん選》
嘆かじと笑み生るるまで冬近き鏡の中にわたしを探す

地震(なゐ)の日へ灯すらふそく追悼の調べに揺れて甦る日日

髪型をそくそく変へて逝く夏の鼓動を君に重ね聴きゐし

解きほぐす夜の水髪さやさやと孤独の影へ触れて雫くを
(経験、知識、人格などなど揃わないと、これはなかなか出ない
お歌ですね。逆に妙な鑑賞評なんて、このお歌には邪魔。秀逸。)


《jonnyさん選》
煮崩れし魚の目ひかる空間は涙の海か とほき潮騒

髪型をそくそく変へて逝く夏の鼓動を君に重ね聴きゐし

《月下燕さん選》
耳鳴りは敗北感のあと曳きて一日(ひとひ)怪しく我を揺さぶる

 耳鳴りと敗北感のつながりにはっとする。その発想にしびれた。
  耳鳴りがずっと続くと一日中なんとなくずっと気になってて集中できない。
  その感じが敗北感とつながるとは・・・なるほど。


《庭鳥さん選》
嘆かじと笑み生るるまで冬近き鏡の中にわたしを探す

蜘蛛の巣へ雨後の水玉きらきらと蝶の翅なし夜へ消えゆく

けもの道迷ふひと達ひたすらに飲食(おんじき)を恋ふ 国生みの日に

縁側に蘭鉢ずらし静脈の透ける日差しを楽しんでをり

宮殿に病臥してゐし一人(いちにん)の微熱のなかに雪ぞ降りくる

玻璃ごしの瀬戸の人形瞬きて旅のをはりの疲れ解しぬ

アンコール痺れる程にしたのちの転調といふ夜の陶酔

後編は怖くて読めぬ 血の叫びどどど聴こゆる春の真中

《水口涼子さん選》
明るむは小雨の窓か飾られし卓の向ふに空つぽの椅子

温暖に没する島よ地球儀を回せば美(は)しきカタカナの海

見えぬ縄ぐるり自縛の思ひして辛夷の朝をひとり欝なる

格式の違ひを思へば切なくて別れ霜とふ甃(いし)を踏みたる

縁側に蘭鉢ずらし静脈の透ける日差しを楽しんでをり

引退の謎めくままに恋多き女優は薔薇の日月を閉づ

雨多き那覇の坂道ぬめりたる樹海にひそむ春の羞(やさ)しも

まぼろしの海を奏づかフルートは静かに恋のとばり降ろしぬ

肩かけに櫻(はな)ひとひらの筆みだれ何故に棺に君あふむける

卓上に咲きなづみゐるガーべラの遮光となりし紙面畳みき


カタカナのお歌は、歌意も表現もすばらしく感動しました。


《鳥羽省三さん選》
ふたたびの夏を真向ふランチして少女はおとなの顔になりゆく

明るむは小雨の窓か飾られし卓の向ふに空つぽの椅子

髪型をそくそく変へて逝く夏の鼓動を君に重ね聴きゐし

解きほぐす夜の水髪さやさやと孤独の影へ触れて雫くを
(同じ真夜中でも、こちらの真夜中は静寂そのもの。
わずかに聞こえるのは、三尺に余る黒髪から滴る雫の音と、さやさやと吹く夜風の音だけ。
 この一首は、一応は、「雫く(水髪)を→解きほぐす」と倒置法めいた体裁とはなっているが、
「夜の→水髪→さやさやと→(孤独の→影へ)触れて→雫くを→解きほぐす→夜の→水髪」と、循環式に何処までも
続いて行くのであり、その循環のリズムに心を同調させて行くと、その流麗にして玄妙な文意も、何と無く理解されて行くのである。)


賑はひの街に格差の日日生れて白き牡丹にけふも雨降る

(みずき)
    見えぬ縄ぐるり自縛の思ひして辛夷の朝をひとり欝なる

 「辛夷の朝をひとり欝なる」が絶妙。
 白でもない乳白色でもない。
 紫でも紅でもない。
 あの淡い独特の色彩で辛夷の花が咲いている朝は、どんな健康な人だって憂鬱を感じたものです。
 しかも、その季節の朝は、決まってどんよりと曇った朝だったりして。
     〔答〕 曇天に身体も魂(たま)も誘(いざな)はれ辛夷の朝をひとり欝なる  鳥羽省三


(みずき)
    首塚に雪の降るらし敦盛の笛ひようびようと哭きて吹雪くや

 本作での「首塚」は勿論、無冠太夫<平敦盛>の首塚。
 したがって、本作の舞台となった場所は須磨寺でありましょう。
 この須磨寺には、かつて多くの文人墨客が訪れたが、それらの代表はなんと言っても、俳聖・松尾芭蕉(1644~1694)と、その後継者の与謝蕪村(1716~1784)でありましょう。

    須磨寺やふかぬ笛きく木下闇    松尾芭蕉

    笛の音に波もよりくる須磨の秋   与謝蕪村

 この二句に共通するのは「笛」。
 それも、現実には聞こえるはずもない笛の音なのである。
 芭蕉や蕪村が、この地を訪れてから幾世紀かが過ぎた平成の今日、この歌枕の地をもう一人の墨客が訪れる。
 その人の名は<みずき>さん。
 彼女もまた耳を澄まして、彼の青葉の笛の音を聞こうとするのだが、折り悪しくも時は真冬。
 聞こえて来るのは、「ひようびよう」として響く「吹雪」の音だけなのである。
 その吹雪の音を彼女は、彼の無冠太夫・平敦盛が泣きながら吹く、名笛・青葉の笛の音として耳を傾けるのであった。

     〔答〕 聞こえ来る音は青葉か然(さ)に非ず耳に入るのは吹雪の音ばかり  鳥羽省三


《理阿弥さん選》
014:煮
煮崩れし魚の目ひかる空間は涙の海か とほき潮騒

015:型
髪型をそくそく変へて逝く夏の鼓動を君に重ね聴きゐし

018:格差
賑はひの街に格差の日日生れて白き牡丹にけふも雨降る

037:藤
藤海に溺るる蝶の仄見えて音無き午後の孤独華やぐ

047:警
少年を眼に残したる警官の過ぎて短日あすは浅草

056:アドレス
春の光(かげ)踏みて饒舌なりし日をアドレス帳の端に書きたす

077:屑
青ざかる夢を揺らせし夕顔の儚く朽ちて屑となる夜は

099:戻
戻りたき日の数あれば今日もまた耳奥(じあう)に虫のいぶせくも啼く

題を正面から取り上げて、かつ狭い世界に耽溺しない手際が見事です。
手強いお題になると、私なんかはどうしても捻ったり逃げに走ったりしてしまうのですが、
こんな風にみずみずしく情景を詠えたら、と羨ましく思います。
お題に加え、もうひとつ世界を支える柱となる題材のもってき方に学ぶところ大。
この中ではあえて淡々とした一首、47番に◎。


《陸王さん選》

001:笑(みずき) (空)
嘆かじと笑み生るるまで冬近き鏡の中にわたしを探す

私的には二百数十首のなかで最も輝いていたのですが、一首だけをとりあげて見てみればその完成度のため言葉がありませんw
本来「鏡」=「わたし」であって、「わたし」=「笑み」なのだけれど、「鏡」の中にはいまのところ「笑み」はなくて。
晩秋の物悲しさや「嘆」の文字の使い方やら、心は沈んでいるようであっても「探す」と「生るる」の救い。
かなり昔のようなわずか二年余り前、自分探しの旅をしていたことを思い出してしまいました。
このあとどうなったのか少し気になったので、みずきさんの作品たちを読んでみました。
答えはありましたww

100:好(みずき) (空)
某日は絶好調といふ君へ不毛の愛を見し水たまり


私の拙い歌に沢山の選、丁寧なコメントに感謝です。
思いがけないおほめに預かり、感動しました。
 

西中真二郎さま選 53首(2009年)

 投稿者:みずき  投稿日:2009年 6月 4日(木)11時15分31秒
編集済
  001:笑     嘆かじと笑み生るるまで冬近き鏡の中にわたしを探す

002:一日    耳鳴りは敗北感のあと曳きて一日(ひとひ)怪しく我を揺さぶる

003:助     助動詞のあとに点うつ形して涙を落とす さよならの紙

005:調    地震(なゐ)の日へ灯すらふそく追悼の調べに揺れて甦る日日

006:水玉    蜘蛛の巣へ雨後の水玉きらきらと蝶の翅なし夜へ消えゆく

009:ふわふわ ふはふはと幻想あをき夜の顔 ショパンを擬して弾くノクターン

010:街     街路樹に雪降る夜のくつきりと 美(は)しき時間はいつも悲しい

013:カタカナ  温暖に没する島よ 地球儀を回せば美(は)しきカタカナの海

014:煮     煮崩れし魚の目ひかる空間は涙の海か とほき潮騒

018:格差    賑はひの街に格差の日日生れて白き牡丹にけふも雨降る

019:ノート   ノートとふ余白も筆も恋さへも破り捨てたる十八歳(じゆうはち)の海

020:貧     貧しさに日々白くなる小さき掌(て)よ 泣かぬ素顔に佐渡の海鳴る

021:くちばし  わたくしの宙(そら)も真冬もついばみて くちばしくるりん水を弾けり

024:天ぷら   天ぷらと冷やかした日のなほ遠く学生街と同じ夏の陽

025:氷     氷山の一角くづれ埒もなき 踊る会議のあとの虚しさ

026:コンビニ    雨あとの水になる影コンビに滑りこみたる真夜の静けさ

028:透明         透明はただ夢のやう 明け方の玻漓はすずろに雪を降らしぬ

029:くしゃくしゃ くしやくしやに泣きし記憶の鏡もて蝶舞ふけふの羞(やさ)しさ映す

031:てっぺん     山峡を谺する声ほととぎす「てつぺんかけたか」我、繭蘢り

034:序           秩序なき街に降りくる雪乱れ人型白く消ゆる たまゆら

035:ロンドン     ロンドンの涙も冬も過ぎし日の哀愁 テムズの霧と消えたる

036:意図         その意図に触れしワインの色優し 春の予感にときめく今宵

038:→      →(標識)を向けしあしたの海岸は春愁美(は)しき夢を咲かすか

039:広      広さより温みの欲しきこの部屋の隅に風吹くけふも明日も

044:わさび    わさびの香くらりと沁みる眼間(まなかひ)へ初冬の光いつそ明るし

049:ソムリエ   ソムリエの微笑に弾むフルコース萎れぬ薔薇の時間過ぎゆく

050:災      震災の闇に埋もるあの朝を舞ひてし蝶が群れて華やぐ

052:縄      見えぬ縄ぐるり自縛の思ひして辛夷の朝をひとり欝なる

053:妊娠     妊娠を告げる女優の輝いて温き二月の雨降りしきる

54:首       首塚に雪の降るらし敦盛の笛ひようびようと哭きて吹雪くや

055:式      格式の違ひを思へば切なくて別れ霜とふ甃(いし)を踏みたる

056:アドレス   春の光(かげ)踏みて饒舌なりし日をアドレス帳の端に書きたす

057:縁      縁側に蘭鉢ずらし静脈の透ける日差しを楽しんでをり

061:ピンク    清純な白あはく染めピンクとふ夢に最も近きその色

062:坂      雨多き那覇の坂道ぬめりたる樹海にひそむ春の羞(やさ)しも

063:ゆらり    急くほどにゆらり時間の立ちどまる 夢狂ほしき冬の逢ふ瀬は

065:選挙     選挙カー過ぎて黄塵なほ重く十日の菊の散りて明日なる

067:フルート   まぼろしの海を奏づかフルートは静かに恋のとばり降ろしぬ

068:秋刀魚     悲しみを燃やして疎し秋刀魚焼く匂ひもろとも貴方を探す

070:CD      CDの回りし箱が歌ふ夜へ春恋ふ心そつと採りだす

071:痩      痩せてゆく腕も心もこの恋も梅雨のあとさき濡れて小寒き

072:瀬戸     玻璃ごしの瀬戸の人形瞬きて旅のをはりの疲れ解しぬ

074:肩      肩かけに櫻(はな)ひとひらの筆みだれ何故に棺に君あふむける

075:おまけ    失恋の春に凭れて凝る貌(かほ)おまけに雨の降りてぼろぼろ

078:アンコール  アンコール痺れる程にしたのちの転調といふ夜の陶酔

079:恥      恥かきし夜はゆつくり脳葉の右でさよなら呟いてみる

082:源      吾亦紅夜のとばりを明け染めて源流ちかきせせらぎに咲く

084:河     「帰らざる河」共に観し街角はうたた過ぎゆく春の陽炎

85:クリスマス  一人ゐて窓べに灯すクリスマス 君住む街へとほき雪降る

086:符      あの夏の記憶に佇ちて切符もつ指木枯らしのなかの改札

091:冬      冬櫻身ぬち明るきこの夜をしらしら小さき雪の降りつむ

097:断      我が脳の斯くけざやかな断面図 空蝉おちて夏の小寒き

099:戻      戻りたき日の数あれば今日もまた耳奥(じあう)に虫のいぶせくも啼く
 

贈った歌

 投稿者:みずき  投稿日:2009年 4月19日(日)15時56分12秒
  歌魂に触れたる夜半をひからしむ春稲妻のとほき轟き  

サイバー歌会「桜」

 投稿者:みずき  投稿日:2009年 3月27日(金)20時33分47秒
  心電図乱れし洞を花房の海ひたひたと満たす静けさ みずき  

題詠100首ブログ2009より

 投稿者:みずき  投稿日:2009年 2月27日(金)09時19分58秒
  001:笑     嘆かじと笑み生るるまで冬近き鏡の中にわたしを探す

002:一日    耳鳴りは敗北感のあと曳きて一日(ひとひ)怪しく我を揺さぶる

003:助     助動詞のあとに点うつ形して涙を落とす さよならの紙

004:ひだまり 春浅き沈默の愛(は)し 乳呑み児を包むひだまり安らかにあれ

005:調    地震(なゐ)の日へ灯すらふそく追悼の調べに揺れて甦る日日

006:水玉    蜘蛛の巣へ雨後の水玉きらきらと蝶の翅なし夜へ消えゆく

007:ランチ  ふたたびの夏を真向ふランチして少女はおとなの顔になりゆく

008:飾     明るむは小雨の窓か飾られし卓の向ふに空つぽの椅子

009:ふわふわ ふはふはと幻想あをき夜の顔 ショパンを擬して弾くノクターン

010:街     街路樹に雪降る夜のくつきりと 美(は)しき時間はいつも悲しい

011:嫉妬    罪深きけふを嫉妬の風吹きて逆立つ髪を千千(ちぢ)に乱さん

012:達     けもの道迷ふひと達ひたすらに飲食(おんじき)を恋ふ 国生みの日に

013:カタカナ  温暖に没する島よ 地球儀を回せば美(は)しきカタカナの海

014:煮     煮崩れし魚の目ひかる空間は涙の海か とほき潮騒

015:型     髪型をそくそく変へて逝く夏の鼓動を君に重ね聴きゐし

016:Uターン   Uターンそして悲しき日日を捨て百合咲く明日へとほく駆りたる

017:解      解きほぐす夜の水髪さやさやと孤独の影へ触れて雫くを

018:格差    賑はひの街に格差の日日生れて白き牡丹にけふも雨降る

019:ノート   ノートとふ余白も筆も恋さへも破り捨てたる十八歳(じゆうはち)の海

020:貧     貧しさに日々白くなる小さき掌(て)よ 泣かぬ素顔に佐渡の海鳴る

021:くちばし  わたくしの宙(そら)も真冬もついばみて くちばしくるりん水を弾けり

022:職     再びの天職と思へさ揺らぐは涙に映ゆる如月の月

023:シャツ   少しシャツ縮むあしたの身の丈を測らぬままに母は逝きたる

024:天ぷら   天ぷらと冷やかした日のなほ遠く学生街と同じ夏の陽

025:氷     氷山の一角くづれ埒もなき 踊る会議のあとの虚しさ

026:コンビニ    雨あとの水になる影コンビに滑りこみたる真夜の静けさ

027:既       始まりて既に過去なる恋のこと 辛夷の雨に濡れてしわたし

028:透明         透明はただ夢のやう 明け方の玻漓はすずろに雪を降らしぬ

029:くしゃくしゃ くしやくしやに泣きし記憶の鏡もて蝶舞ふけふの羞(やさ)しさ映す

030:牛           牛歩するゲーム戦術 紅梅のつぼみ隠(こも)らふ庭は土曜日

031:てっぺん     山峡を谺する声ほととぎす「てつぺんかけたか」我、繭蘢り

032:世界         空蝉の哭く幻聴が 不況とふ世界の角に豪雨降りたる

033:冠           誘惑へ魔の時の憂し 幻想のやがて昂(たかぶ)る「李下の冠

034:序           秩序なき街に降りくる雪乱れ人型白く消ゆる たまゆら

035:ロンドン     ロンドンの涙も冬も過ぎし日の哀愁 テムズの霧と消えたる

036:意図         その意図に触れしワインの色優し 春の予感にときめく今宵

037:藤      藤海に溺るる蝶の仄見えて音無き午後の孤独華やぐ

038:→      →(標識)を向けしあしたの海岸は春愁美(は)しき夢を咲かすか

039:広      広さより温みの欲しきこの部屋の隅に風吹くけふも明日も

040:すみれ    すみれ咲く記憶の淵に横たはる亡父(ちち)の涙か 一粒の雨

041:越      越しきたるひと世に揺らぐ陽炎の春揺籃のうたた恋しき

042:クリック   クリックをためらふ時間ダブルして躓きし愛呼びもどしをり

043:係      したためる係りことばや終(つひ)の文 真椿灯すポストへの道

044:わさび    わさびの香くらりと沁みる眼間(まなかひ)へ初冬の光いつそ明るし

045:幕      幕間のざわめきの中透かし読む曲目リスト・ショパン・ラララ

046:常識     常識の二文字失せし恋ならば雪降るごとく消えよ二人で

047:警      少年を眼に残したる警官の過ぎて短日あすは浅草

048:逢      逢ひ別れこころ真闇の冬を啼く虫となりては明日の鈴振る

049:ソムリエ   ソムリエの微笑に弾むフルコース萎れぬ薔薇の時間過ぎゆく

050:災      震災の闇に埋もるあの朝を舞ひてし蝶が群れて華やぐ

051:言い訳    言ひ訳の脆き心を流るるは恋か涙か 見えないあした

052:縄      見えぬ縄ぐるり自縛の思ひして辛夷の朝をひとり欝なる

053:妊娠     妊娠を告げる女優の輝いて温き二月の雨降りしきる

54:首       首塚に雪の降るらし敦盛の笛ひようびようと哭きて吹雪くや

055:式      格式の違ひを思へば切なくて別れ霜とふ甃(いし)を踏みたる

056:アドレス   春の光(かげ)踏みて饒舌なりし日をアドレス帳の端に書きたす

057:縁      縁側に蘭鉢ずらし静脈の透ける日差しを楽しんでをり

058:魔法     法螺吹きは魔法使ひの杖を突き白雨の街をさめざめと行く

059:済      決済をためらふ指に春の風 疲れた脳(なづき)ほつと和みぬ

060:引退     引退の謎めくままに恋多き女優は薔薇の日月を閉づ

061:ピンク    清純な白あはく染めピンクとふ夢に最も近きその色

062:坂      雨多き那覇の坂道ぬめりたる樹海にひそむ春の羞(やさ)しも

063:ゆらり    急くほどにゆらり時間の立ちどまる 夢狂ほしき冬の逢ふ瀬は

064:宮      宮殿に病臥してゐし一人(いちにん)の微熱のなかに雪ぞ降りくる

065:選挙     選挙カー過ぎて黄塵なほ重く十日の菊の散りて明日なる

066:角      角といふ角に不安の溢れゐて真中に置きし夜の携帯

067:フルート   まぼろしの海を奏づかフルートは静かに恋のとばり降ろしぬ

068:秋刀魚     悲しみを燃やして疎し秋刀魚焼く匂ひもろとも貴方を探す

069:隅      この朝を繰りて眩しき日の欠けら庭隅隅を埋めて二ん月

070:CD      CDの回りし箱が歌ふ夜へ春恋ふ心そつと採りだす

071:痩      痩せてゆく腕も心もこの恋も梅雨のあとさき濡れて小寒き

072:瀬戸     玻璃ごしの瀬戸の人形瞬きて旅のをはりの疲れ解しぬ

073:マスク    この夜を君は悲しきデス・マスク祈る象(かたち)に過ぎゆく時間

074:肩      肩かけに櫻(はな)ひとひらの筆みだれ何故に棺に君あふむける

075:おまけ    失恋の春に凭れて凝る貌(かほ)おまけに雨の降りてぼろぼろ

076:住      ローソンの灯して暗き五号室 都会に住まふことの淋しさ

077:屑      青ざかる夢を揺らせし夕顔の儚く朽ちて屑となる夜は

078:アンコール  アンコール痺れる程にしたのちの転調といふ夜の陶酔

079:恥      恥かきし夜はゆつくり脳葉の右でさよなら呟いてみる

080:午後     午後二時と船の間(あはひ)はさよならの青も朧な春の揺らめき

081:早      早早に海図伏せられ空と海交はるオーラ身に感じゐし

082:源      吾亦紅夜のとばりを明け染めて源流ちかきせせらぎに咲く

083:憂鬱     降る雨は春の憂鬱 手を伸ばす人も無ければ櫻恋ほしき

084:河     「帰らざる河」共に観し街角はうたた過ぎゆく春の陽炎

85:クリスマス  一人ゐて窓べに灯すクリスマス 君住む街へとほき雪降る

086:符      あの夏の記憶に佇ちて切符もつ指木枯らしのなかの改札

087:気分     ブルーなる気分が雨を降らすらし 沈默の紫蘭と隠(こも)る部屋の角つこ

088:編      後編は怖くて読めぬ 血の叫びどどど聴こゆる春の真中

089:テスト    答へ無きテストのやうな一枚が二人の夢へひらひらと舞ふ

090:長      この長き影は日暮れへ逆光の街ゆくわたし 春の影ふむ

091:冬      冬櫻身ぬち明るきこの夜をしらしら小さき雪の降りつむ

092:夕焼け    冬夕焼け(ゆやけ)透きてあの日が仄見ゆる私のなかを燃えし一瞬

093:鼻      鼻息の白き世界の小さくて見えない夢をうつら探しぬ

094:彼方     薄ら氷(ひ)の彼方に匂ふ春の土 かそけき風のはぐくむ新芽

095:卓      卓上に咲きなづみゐるガーべラの遮光となりし紙面畳みき

096:マイナス   マイナスのイメージ既にとほき人 画紙モノクロに繊き雨降る

097:断      我が脳の斯くけざやかな断面図 空蝉おちて夏の小寒き

098:電気     電気車は鉄鎖を曳きてそこかしこ誰の悲運のゆゑに奔るか

099:戻      戻りたき日の数あれば今日もまた耳奥(じあう)に虫のいぶせくも啼く

100:好      某日は絶好調といふ君へ不毛の愛を見し水たまり
 

2006題詠、西中さま選、43首

 投稿者:みずき  投稿日:2008年 9月10日(水)15時54分6秒
  002:指(みずき)外れない指輪のやうな気だるさがグラスワインを傾けてゐる
003:手紙(みずき) ポケットに手紙しのばせ地図のない街のポストを探しつづけぬ 30首
007:揺(みずき) 揺れてゐる目(まな)滑らかな言ひ訳へ夢と消えゆくふたたびの夏
010:桜(みずき) 五感からハープが震ふ毀れゆく桜の闇は細く悲しい
011:からっぽ(みずき)頬あをきピカソの女からつぽの花瓶の夜を灯しつづけぬ
016:せせらぎ(みずき)情熱をひたひた溜めし手のひらが触るる刹那の雪のせせらぎ
020:信号(みずき)信号の十字をわたる真ん中は疎外感とふ青の哀しみ
021:美(みずき)美しき日日も翳みて八十路なる母は狂女のうすき眉ひく
023:鍵 (みずき) 水そこに恋の気泡の鍵やある躓きさうな靴の小ささ
024:牛乳(みずき)湯煎しつつ黙(もだ)す一瞬 牛乳のなかに澱みし怒りは溶けず
027:嘘(みずき)嘘はもう記憶の淵に眩しくて愛執とほき水のささやき
029:草(みずき)草雲雀さりさり砕く木蔭より ささら水恋ふ夕(よ)べの翅うつ
031:寂(みずき)落櫻に寂しき髪の乱れたる人待つ夜の四条烏丸(からすま)
034:シャンプー  (みずき)ほたる火は湯船に青きシャンプーの残り香ならん 水かけ放つ
035:株 株分けし菊の小夜風あはあはと花の乱舞の遥けき序奏
038:灯 ( みずき)みちのくの春を灯して花花の競ふあはひを声なく過ごす
041:こだま(みずき)かへりこぬ昨夜(きそ)のこだまは山峡の宿に掠れし時計を鳴らす
042:豆 (みずき) ひやひやと豆まく春の加速度へこころの小鬼映す玻璃窓
043:曲線(みずき)曲線はスカートの丈織りなして街ゆくひとの春を揺らせり
045:コピー(みずき)コピーしたユトリロの街ひんやりと抱へ小雨を灯す駅舎に
048:アイドル(みずき)アイドルは爪立ち踊るからくりの人形我の心にもゐて
049:戦争(みずき) 戦争に耐へきし母の号泣か とほき羽蟻の我が耳に棲む
051:しずく(みずき)しづくする光の迷路たわたわと桜吹雪の渓へ落ちむか
052:くるぶし(みずき)舞姫のくるぶし細む三月の雪の幻想しまきし夕(よ)べは
053:プログ  (みずき)ブログとふ闇の部分を切り裂いて覗いてみたし欝なる日日を
055:頬 (みずき)降りたちし終着駅は頬ぬらす海のひかりの旅情に青き
058:抵抗(みずき)抵抗もせず流れきし我が海の怒涛知らじな 髪がたを変ふ
059:くちびる(みずき)ペルシャ猫こよひ琥珀の目を吊りてくちびる欲りぬ生臭き春
060:韓 (みずき)韓(から)といふ文字(もんじ)へまはす地球儀の見知らぬ海を春が揺らせり
062:竹 (みずき)笹竹の茂り踏みわけ庵奥へすずしき嵯峨野歩ごと纏ひぬ
064:百合(みずき)雪原に凝る百合の木いくさからいくさの日日を立ち尽くすまま
069:カフェ(みずき)黎明をめくるページの端つこに今日も置かれるカフェの椅子が
070:章 (みずき) 木の椅子にショパン開かれ奔放な日差しを捲る夏の楽章
071:老人(みずき)過去きざむ秒針のなか老人は夜床(ゆとこ)の石となりてまどろむ
074:水晶(みずき)水晶の屈折秘むる胡蝶蘭月の欠けらを抱きて俯く
075:打 (みずき) <打(ぶ)たれても>導く主へ裏切りのユダは晩餐絵図にくぐまる
080:響 (みずき)水おとに響く羽音の漲りて 翔(た)つ鳥すでに白き朝靄
081:硝子(みずき)硝子吹く青年包む薄暮とふオランダ坂に白薔薇の冷ゆ
082:整 (みずき)整ひし母の函よりありし日の単(ひとへ)と春の予感とりだす
083:拝 (みずき)魂(たま)からむ糸の苦しさ拝んでも帰らぬ明日がまた絞めつける
085:富 (みずき)慟哭の野を富ましめよ追憶は父に抱かれし揺籃のなか
086:メイド (みずき) 咲きなづむ切り花を手にメイドなる時間を青きグラスに挿しぬ
089:無理 (みずき)無理かさね逝きしは父かかげろふか耳に残れる秋の幽けし
 

題詠2008西中真二郎さま選 50首

 投稿者:みずき  投稿日:2008年 7月19日(土)10時39分43秒
  (みずき)後のなき答へ戸惑ふ指の間(あひ)二次試験とふ朝の暗がり

(みずき) 塩茹での魚は怪しき反り身なる遠き日暮れの海鳴りのなか

(みずき) 降る雨に放電灯のなほ冴えて揚羽のごとき影を落としぬ

(みずき)紙魚となりドラマティックな生涯の日記に映す亡父(ちち)の残像

(みずき)君去りし十日ののちの胡蝶蘭 壁のしじまに血色透かすか

(みずき)蝶死して花とならんか春雨の十粒のなかに木の葉揺れたる

(みずき)臓物を除く手さばき青白き炎(ほむら)となりて魚の横たふ

(みずき) ひんやりと額に触れし指つたふ優しさ重さ春は間どほく

(みずき) 泉湧くほとり真さをき睡蓮の淡く暮れゆく古都の回廊

(みずき)アジアから風の吹くらし蘭鉢の黄ばむガラスに幼き指紋

(みずき) 頭髪を束ね恋ほしき夏化粧もろき心に二夜(ふたよ)泣きしも

(みずき)マジシャンが放ちてとほき鳩笛の帰らぬ午後を春愁といふ

(みずき) 一心にサッカーボウル蹴り上げし空は三月落ちて花冷え

(みずき)こゑ低き君にしあればガラスより繊細な魂(たま)ふと見失ふ

(みずき)岸壁に俯く女さよならの容をそつと傘に隠せり

(みずき)湯気たてて土鍋に落とす怒り癖あしたの見えぬ箸つつきあふ

(みずき)忍冬(すひかづら)夏咲く花の羞(やさ)しさをうすうす挿せり淋しき髪に

(みずき)ルージュもて鏡に描きしさよならの海が広がる夏冷ゆる午後

(みずき) 日当たりて小さきものよ割られゐしすいかの朱より海の高鳴る

(みずき)岡に摘む草の間(あはひ)の指がしら触れゆく風は青き春なる

(みずき)存在の薄き影ひく梅雨の階 うつろに低き太陽の消ぬ

(みずき)粘りつく暑き庭先うつすらと明日の夕顔ねむる静けさ

(みずき)宝くじ十枚ほどの夢だきて恋の水髪梳きし小春日

(みずき)鈴ばさみ解す刺繍のあはあはと季節の縫ひ目たどり三月

(みずき)太陽を追ふ華やぎと哀しみの真中に揺れてひまわりの雨

(みずき)上げ凧は放物線の糸曳きて雪の無音を空に映せり

(みずき) 熊穴に篭りて雨の降りさうな 小枝に懸かる昨夜(よべ)の月影

(みずき)キヨスクの灯す夜風に膨らますパンの形に軽き小ぶくろ

(みずき)考へに沈みて夜の声亡くす 窓に懸かりし満月は冬

(みずき) 悩みたる夜夜の調べを一枚の蝶と孵さん夢の朧に

(みずき)人型にパジャマ吊られし冬の部屋 人追ふこころ痩せて愛(かな)しき

(みずき)太郎山怪しく翳るおぼろ夜は男女(めを)奔放に明けざるといふ

(みずき)@より@へ恋の交差して点打つ指の冷え冷えと秋

(みずき) 潮騒へ日の目眩(くるめ)く堕ちゆきて縞目に消ゆる海の恋(こほ)しき

(みずき) 葱きざむ音は亡母かわたしかと厨あかりが揺れて如月

(みずき)ダリの絵の呼吸をしたる 青磁から藍のトーンに変はるたまゆら

(みずき) 寄り道をすれば雨降る屋久島の洞に棲みつく海の高鳴り

(みずき)櫻咲く合図のやうにベルの鳴る携帯にぎる半そでの朝

(みずき) 女児に挿す花の簪ある時は花壇の春が咲かす一輪

(みずき)Lサイズ丈ながく穿く儚さを黙(もだ)して過ぐる街を倦みたる

(みずき) 月光に研ぎ澄まされし公園のベンチに残る帽子の女

(みずき)名古屋から乗る青春が寄り添ひて風澄む秋の風情もたらす

(みずき) うがひする朝な朝なの冷たさは我が命脈ぞ朝露を踏む

(みずき) ぎらぎらと真夏の海を感じつつ けふ天使なる吾子を泳がす

(みずき)枯渇せる泉は空を映しえず星降る夜の底ひ溜めゐし

(みずき)錯覚の愛が苔むす夜の底ひ足掻く指から洩れる月光

(みずき) 複雑な思ひに揺れしあの頃を生きて又問ふ 君莞爾(くわんじ)たれ

(みずき) 勇猛なギリシャ神話の一こまを壁画に触れしのちの雪なる

(みずき) おやすみの電球消せずプロフィール見つめつづけぬ 明日はさよなら

(みずき) 何ごとも不定愁訴と片づけつ皿洗ふ手の震へ恐れぬ
 

題詠100首ブログ2008より

 投稿者:みずき  投稿日:2008年 7月11日(金)15時04分47秒
  001:おはよう  三月へ終(つひ)の雪とも おはやうとなぞる指より滴りて落つ

002:次       後のなき答へ戸惑ふ指の間(あひ)二次試験とふ朝の暗がり

003:理由   その理由嘘をふふみて美しき ひたすら青き別れの頬へ

004:塩    塩茹での魚は怪しき反り身なる遠き日暮れの海鳴りのなか

005:放    降る雨に放電灯のなほ冴えて揚羽のごとき影を落としぬ

006:ドラマ  紙魚となりドラマティックな生涯の日記に映す亡父(ちち)の残像

007:壁    君去りし十日ののちの胡蝶蘭 壁のしじまに血色透かすか

008:守    とほき日の鎮守の杜を山川を懊悩の日日眼つむれば ああ

009:会話   会話から一直線に君をみる愁思のほどに深きため息

010:蝶    蝶死して花とならんか春雨の十粒のなかに木の葉揺れたる

011:除    臓物を除く手さばき青白き炎(ほむら)となりて魚の横たふ

012:ダイヤ  散りばめしダイヤの空が堕ちさうな灯して暗き屋台の動く

013:優    ひんやりと額に触れし指つたふ優しさ重さ春は間どほく

014:泉    泉湧くほとり真さをき睡蓮の淡く暮れゆく古都の回廊

015:アジア  アジアから風の吹くらし蘭鉢の黄ばむガラスに幼き指紋

016:%    数%零れしのちの大雨があしたへ渡す橋を流しぬ

017:頭    頭髪を束ね恋ほしき夏化粧もろき心に二夜(ふたよ)泣きしも

018:集    集落のなかの一つ家とんとんと鶴(つう)は尾羽を切なく紡ぐ

019:豆腐   雪の夜の豆腐を煮れば泡ほどの雪白のこし甘き香はなつ

020:鳩    マジシャンが放ちてとほき鳩笛の帰らぬ午後を春愁といふ

021:サッカー  一心にサッカーボウル蹴り上げし空は三月落ちて花冷え

022:低    こゑ低き君にしあればガラスより繊細な魂(たま)ふと見失ふ

023:用紙   寸断の用紙ひとひら舞ひ散りて雪の降るらし二丁目の角

024:岸    岸壁に俯く女さよならの容をそつと傘に隠せり

025:あられ  あられ餅煎ればふるふる雪の夜の小(ちさ)き膨らみ翳すをさな児

026:基    基本から生(あ)れしタップかアイドルは時雨れてとほき郷里を舞へり

027:消毒   消毒の肉叢(ししむら)あはく月に浮く暗き思ひを白く変へませ

028:供    夭折の母に供へし白百合がとほくなりゆく風景に咲く

029:杖    杖を突く足より蕩け小半時 櫻朧に惚けし老女

030:湯気   湯気たてて土鍋に落とす怒り癖あしたの見えぬ箸つつきあふ

031:忍    忍冬(すひかづら)夏咲く花の羞(やさ)しさをうすうす挿せり淋しき髪に

032:ルージュ ルージュもて鏡に描きしさよならの海が広がる夏冷ゆる午後

033:すいか  日当たりて小さきものよ割られゐしすいかの朱より海の高鳴る

034:岡   岡に摘む草の間(あはひ)の指がしら触れゆく風は青き春なる

035:過去  消えゆくは過去に息づくわたくしの存在 小(ちさ)き恋のまぼろし

036:船   宙船(そらふね)を唄ふ少年人生の海に捨てなんオール握るや

037:V   Vといふ文字(もんじ)永久なる不安定 孤愁に浮かぶ草の露とも

038:有      捲りたる季節の端に椅子一つ有島武郎論と櫻と

039:王子  王子ともオフェリアとも北欧の湖上に咲ける一輪の花

040:粘   粘りつく暑き庭先うつすらと明日の夕顔ねむる静けさ

041:存在  存在の薄き影ひく梅雨の階 うつろに低き太陽の消ぬ

042:鱗   鱗雲そよ吹く風の十月を小雨降るまで流しゆくなり

043:宝くじ 宝くじ十枚ほどの夢だきて恋の水髪梳きし小春日

044:鈴   鈴ばさみ解す刺繍のあはあはと季節の縫ひ目たどり三月

045:楽譜  弾きゐしは春の渚かショーパンの海の匂ひか楽譜の熱き

046:設   設営のテントが孕む孤独感 夢と感動いま駆けぬけり

047:ひまわり 太陽を追ふ華やぎと哀しみの真中に揺れてひまわりの雨

048:凧    上げ凧は放物線の糸曳きて雪の無音を空に映せり

049:礼    礼状は櫻しぐれに逝きし魂(たま)泣きて五月のその後のこと

050確率    また逢はむ確率の無き雨音の狂ひて堕ちしぼうたんの朱よ

051:熊    熊穴に篭りて雨の降りさうな 小枝に懸かる昨夜(よべ)の月影

052:考    考へに沈みて夜の声亡くす 窓に懸かりし満月は冬

053:キヨスク キヨスクの灯す夜風に膨らますパンの形に軽き小ぶくろ

054:笛    春の笛吹くらし鳥の群れたちて運命(さだめ)に泣きし女駆けだす

055:乾燥   乾燥に小くなりゆく指(および)ゆゑ失せし指紋の雨と降りくる

056:悩    悩みたる夜夜の調べを一枚の蝶と孵さん夢の朧に

057:パジャマ 人型にパジャマ吊られし冬の部屋 人追ふこころ痩せて愛(かな)しき

058:帽    両耳を塞ぐ帽子に隠したる術なき思ひ笑はぬをんな

059:ごはん  ごはんさへ喉を通さじ狂ひゆく女(ひと)の齢が春をさ迷ふ

060:郎    太郎山怪しく翳るおぼろ夜は男女(めを)奔放に明けざるといふ

061:@        @より@へ恋の交差して点打つ指の冷え冷えと秋

062:浅    浅き夢膨らむやうな春愁が亡父(ちち)の木高く花をつけたる

063:スリッパ スリッパの音し聴こゆる朧夜が疑惑の床を夢と変へたる

064:可憐   然はなれど野薔薇の可憐、海の勇、糸曳くごとく吹く春風よ

065:眩    潮騒へ日の目眩(くるめ)く堕ちゆきて縞目に消ゆる海の恋(こほ)しき

066:ひとりごと ひとりごと泣きし記憶の一点をぐるぐる舞ひて落ちし白蝶

067:葱     葱きざむ音は亡母かわたしかと厨あかりが揺れて如月

068:踊     母が逝き父逝き細くなる耳へ踊りの擬音泣きて遠のく

069:呼吸    ダリの絵の呼吸をしたる 青磁から藍のトーンに変はるたまゆら

070:籍     いつぽんの筆が消しさる戸籍ゆゑ血より濃き雨降らなこの身に

071:メール   メールでは表しきれぬ心奥は空白に打つ点と線なる

072:緑     緑濃き山山なれば輪郭はあくまで蒼き五月雨と降る

073:寄     寄り道をすれば雨降る屋久島の洞に棲みつく海の高鳴り

074:銀行   銀行の灯が消えさうな弥生から逃げて寒色腕に抱きしむ

075:量    推量はメモに残りし約束が雪しまくごと迷ふそれゆゑ

076:ジャンプ 雪中をジャンプするよな恋の日日 雪蛍とふ炎燃やしつ

077:横    横車おして転けるか傲慢の壁はうつつに拉ぐをちこち

078:合図   櫻咲く合図のやうにベルの鳴る携帯にぎる半そでの朝

079:児    女児に挿す花の簪 ある時は花壇の春が咲かす一輪

080:Lサイズ  Lサイズ丈ながく穿く儚さを黙(もだ)して過ぐる街を倦みたる

081:嵐    嵐吹く街モノクロに凄まじき海図に曳きし描線のなか

082:研    月光に研ぎ澄まされし公園のベンチに残る帽子の女

083:名古屋  名古屋から乗る青春が寄り添ひて風澄む秋の風情もたらす

084:球    球根の芽吹かん雪の薄らかに青の夢幻へ流れゆくはも

085:うがい  うがひする朝な朝なの冷たさは我が命脈ぞ朝露を踏む

086:恵    恵まるる日を見失ふ義母の椅子仄かな夢に嗤ふ 徒然

087:天使   ぎらぎらと真夏の海を感じつつ けふ天使なる吾子を泳がす

088:錯    錯覚の愛が苔むす夜の底ひ足掻く指から洩れる月光

089:減    エネルギー減りたる朝の諍ひは三日過ぎたる雨の向日葵

090:メダル  勲章もメダルも無くて転覆す船ゆ四十の歳月ののち

091:渇    枯渇せる泉は空を映しえず星降る夜の底ひ溜めゐし

092:生い立ち 生ひ立ちを見まもる絵画ダヴィンチの影に揺らぐは亡父(ちち)の幻

093:周    周辺は孤独とふ家のたちならぶ過疎を啼きゐし春蝉はどこ

094:沈黙  沈黙の君がとほくて泣きさうな私のこころ解かす風鈴

095:しっぽ 箕面(みのお)はも雄瀧のしつぽ曳くやうに雌瀧おちゆく隠沼(こもりぬ) しばし

096:複   複雑な思ひに揺れしあの頃を生きて又問ふ 君莞爾(くわんじ)たれ

097:訴   何ごとも不定愁訴と片づけつ皿洗ふ手の震へ恐れぬ

098:地下  地下街は細身が似合ふジーパンが壁画とも見ゆ 美しき蛍光

099:勇   勇猛なギリシャ神話の一こまを壁画に触れしのちの雪なる

100:おやすみ おやすみの電球消せずプロフィール見つめつづけぬ 明日はさよなら
 

題詠出版本に掲載の10首

 投稿者:みずき  投稿日:2008年 2月28日(木)14時15分13秒
  010:桜 五感からハープが震ふ毀れゆく桜の闇は細く悲しい みずき

021:美 美しき日日も翳みて八十路なる義母(はは)は狂女のうすき眉ひく みずき

045:コピー コピーしたユトリロの街ひんやりと抱へ小雨を灯す駅舎に みずき

049:戦争 戦争に耐へきし母の号泣か とほき羽蟻の我が耳に棲む みずき

064:百合 雪原に凝る百合の木いくさからいくさの日日を立ち尽くすまま みずき

070:章 木の椅子にショパン開かれ奔放な日差しを捲る夏の楽章 みずき

071:老人 過去きざむ秒針のなか老人は夜床(ゆとこ)の石となりてまどろむ みずき

080:響 水おとに響く羽音の漲りて 翔(た)つ鳥すでに白き朝靄 みずき

092:滑 携帯を滑りくるこゑ遠すぎて耳冷ゆるまで嗚咽した夜 みずき

093:落 落下する蝉と啼きだす身の洞が微熱をもちて過ぎゆく五月 みずき
 

2007題詠西中さま選53首

 投稿者:みずき  投稿日:2008年 2月28日(木)14時12分22秒
  001:始  爪立ちて春の始めを飾りゐし雛(ひひな)の髪を梳けば青空

002:晴  晴れ渡る空と時間のさかひ目へ少女はギターつうと立て掛く

003:屋根  屋根うすく染まる朝より春となり気だるき夢を揺らすも一度

005:しあわせ  しあわせの容点せし蝋燭に微笑み揺れてけふ誕生日

006:使  夕顔は天使の涙みづみづと湛へ夕日に白く影ろふ

007:スプーン  スプーンに掬ふ蜂蜜ひんやりと雨の夜更けが窓を叩きぬ

008:種   種の無き葡萄のやうな歯ごたへが愛の時間をまた通り過ぐ

010:握  さよならと真闇の冬へ握手する人と人との夢の儚さ

011:すきま  濡れそぼつ心のすきま埋めんと明日へ冷たき体温を抱く

016:吹   吹き荒ぶ風の攫ひし恋歌を鳴らす五月の雨の音階

017:玉ねぎ  ひたひたと玉ねぎ沈む水の上(へ)に涙道あをく晒す午後の陽

019:男 男死に暗転したる舞踏劇 フィレンツェ通りは薔薇色に暮れ

023:誰 その疑惑誰も素知らぬ振りしつつグラス鳴らして気炎を上げぬ

026:地図 地図なぞる手のひら奔る命線ちぎる未来を天啓と思ふ

028:カーテン カーテンの向かふの影は春愁か 艶(なま)めく風に木木のざわめく

029:国   国生みの話に更けし夜もありて細やぐ燭に屏風絵の消ゆ

030:いたずら  いたづらに過ぎゆく日日よ 虚無といふ心の奥を満たせ春光

031:雪   死のやうな雪の結界 無常とふ心に降らす夜の泡雪

032:ニュース  毎日がニュースのページ繰りかへす良きも悪しきも徒然の春

035:昭和   昭和から続く日溜まり 意識とふ不思議な世界ひそと踏みたる

037:片思い  潮鳴りの一夏(いちげ)眩しき片思ひ 耳に涼しき声の遠のく

038:穴  崩落の穴ゆ堕ちこむ夢の中 か細きみづに睡蓮の消ぬ

040:ボタン  一つだけ外すボタンの高鳴りに燃ゆる思ひをもう捨てられぬ

041:障   ぴつしりと閉めた障子の音曳きて降りだす雨のそぞろ春なる

043:ためいき   ためいきが生(あ)れし春より熱を病み白薔薇重き朝のカーテン

045:トマト  飲食(をんじき)の最中トマトの熟しゆく 日あたる場所に寂しきは赤

046:階段       階段は石を穿ちしそのままに冬の感傷凍みて苔むす

047:没  日没へ翳りて痩せる指(および)ゆゑリングはいつも人拒みゐし

048毛糸  解しゆく母の毛糸が残す冬 五歳の記憶ふはり覆ひぬ

049:約   約束はひと冬越えて黄ばみたる 心の薔薇(さうび)美しく散れ

051:宙   宇宙へと去りにし時間(とき)の数数をふふむ陽炎街に揺らめく

053:爪   爪さきを先づあはあはと染めゆくは遊女墓とふ遠き憂愁

054:電車  西日して虚ろを揺らす電車よりミレーの農婦遠ざかりゆく

057:空気  春さやに湿る空気へ触れし髪 泣かぬ女とならん明日は

061:論   論じあふ時間たつぷり残されて 被髪(うなゐ)乙女に寒き春くる

063:浜   砂浜を凪ぐ夕映えは春愁のいろ美しき私の海図

064:ピアノ  何気なく亡母(はは)のピアノへ触れし夜の遠き旋律わが耳に舞ふ

066:切  切れさうな恋に啼きゐし空蝉のこころ遠かり春光のなか

070:神  神領のひえびえ親し 耳朶震ふ鈴の薄暮へしばし目つぶる

072:リモコン リモコンの真四角滑る指(および)ゆゑ指紋はきくと玻璃に浮かびぬ

073:像  彫像と櫻しぐれのハーモニー醸す湖面の白き細波

074:英語  英語もて歌ふアリアに酔ひし身に夕焼け色のショール纏ひぬ

080:富士  富士湯とふ外湯回れば肩掛けを濡らす夕日がはや落下せり

083:筒  筒井筒わがエッセーに顔をだす君いづくなれ 蝉しぐれ降る

081:露  露地奥に熟れぬ柿もぐあの秋の記憶は今もつぶらに青し

086:石   石となり眠る日浅く逝きし父 血流あをく透きて春なる

088:暗  暗闇に明日は咲くらしひとひらの櫻散りたる 冷え冷えと春

089:こころ  こころばへ美(は)しき拒絶もあるといふ 萎えしそびらに見尽くす冬野

093:祝   祝日を活けし木蓮黄ばみたる夜は小寒き春の音する

095:裏   封筒の裏面を印す己が名へ櫻咲くらし夜の投函

098:ベッド  寝がへればベッドまだるき春の音 雪の玻璃戸へ虚ろに軋む

099:茶   茶話会の春宵となる窓透かしつがひの鳥の美(は)しき嘴(くち)づけ

092:ホテル  はたはたと雪に真白き冬蝶の翅はホテルの灯より出でざる
 

くるりん

 投稿者:みずき  投稿日:2007年11月 7日(水)21時44分47秒
  くるりんとリアルに戻る朝ぼらけ夢の谷間を過去がさ迷ふ
ぱあと咲く雨のあぢさゐ透かしては解(ほご)せぬ恋の青き眩惑
くるるんと回す日傘の絵模様が飛んで地蔵の赤い前垂れ
扇形に回る人形ロココ調 ドアを開けばそこより真夏
回らない秒針ほつり回しては明日は咲くらし百合の夕映え
 

6月歌会(紅)より

 投稿者:みずき  投稿日:2007年 7月 1日(日)15時13分21秒
  真つばきの雨にころりと落花せむ夜はぴりりと真暗きガラス
ほうほうと木霊の棲むか 夕暮れの山は真つ赤に染められて果つ★★(銅賞)
ぴろぴろと風に微熱を吐くやうな真紅のダリア きくと手折らな
夕映ゆる頬くれなゐの中にとぞ君恋ほしきを染めて俯く★★(銅賞)
赤き血も白く凍るか戦慄のページ開きて声を失ふ

番外詠草
身のうちを滴る夜半の朱のワイン爪さき染むる血いろなりしか
懺悔とふ色はくれなゐ咲かぬまま散りたる薔薇の棘の痛さか
かけ違ふボタンホールはくれなゐの音にぷつんと もう逢はないよ
 

5月歌会(緑)

 投稿者:みずき  投稿日:2007年 7月 1日(日)15時11分55秒
  野に降れば緑立つ雨ぐらぐらと地を吹き抜くる命のほむら★★★(金賞)

天海の緑降らしも 緩らかに草原みたす雨水となれ

さはさはと緑雨に触るる笹の音は別れの序曲 見えないあした★★(銀賞)

緑蔭にひづむ墓標を見てしより荒れし船砥ぐ海とおもへり★(銅賞)

踏み入れば森はしたたる青葉光 せつに燃えゐる太陽のなか
 

3月歌会「流」より

 投稿者:みずき  投稿日:2007年 4月 3日(火)21時38分47秒
  流れたる水子のやうな草いきれ 乳の香あまく絡みて酷し ★

しまらくは熊野古道の八軒屋 春光うかぶ流れの愛(は)しき ★★(銅賞)

流行(はや)り歌聴こゆる古都の静けさが過去に戻りし耳を奏でぬ ★

寒桜おひおひ咲きて夕焼けを背負ふほどにも流すくれなゐ ★★★(銀賞)

明日なき欠落感に流されしポッケに落とす夢の儚さ
 

題詠100首ブログより

 投稿者:みずき  投稿日:2007年 3月23日(金)13時26分8秒
  001:始    爪立ちて春の始めを飾りゐし雛(ひひな)の髪を梳けば青空

002:晴    晴れ渡る空と時間のさかひ目へ少女はギターつうと立て掛く

003:屋根   屋根うすく染まる朝より春となり気だるき夢を揺らすも一度

004:限   限界はこの石段ぞ 登りきるまでの太陽汗と曳こづる

005:しあわせ  しあわせの容点せし蝋燭に微笑み揺れてけふ誕生日

006:使    夕顔は天使の涙みづみづと湛へ夕日に白く影ろふ

007:スプーン  スプーンに掬ふ蜂蜜ひんやりと雨の夜更けが窓を叩きぬ

008:種     種の無き葡萄のやうな歯ごたへが愛の時間をまた通り過ぐ

009:週末  週末が解放したる言葉もて鬼女映しだす私の鏡

010:握    さよならと真闇の冬へ握手する人と人との夢の儚さ

011:すきま  濡れそぼつ心のすきま埋めんと明日へ冷たき体温を抱く

012:赤    赤帝のこゑ呼応するごとじりじりと蝉啼く朝へ時の移らふ

013:スポーツ 夕映えの四肢伸びらかに汗の退くスポーツ終へし春の眩しさ

014:温   体温が上昇気味の中にある身ぬち手のひら そして憧れ

015:一緒    一緒てふ十日の青がばうばうと別離の空に美しく燃え

016:吹     吹き荒ぶ風の攫ひし恋歌を鳴らす五月の雨の音階

017:玉ねぎ  ひたひたと玉ねぎ沈む水の上(へ)に涙道あをく晒す午後の陽

018:酸    この甘き時間をティーに注ぎこみ舌に残れる酸つぱさ消さん

019:男    男死に暗転したる舞踏劇 フィレンツェ通りは薔薇色に暮れ

020:メトロ  メトロより死角にありし雨の街 不意に鳥啼く午後の傘さす

021:競      夏蝉は落ちたる後の草むらに競ひし枝の昨日を啼けり

022:記号    某国の記号となりし一文字を明日なき闇が覆ふ それから

023:誰      その疑惑誰も素知らぬ振りしつつグラス鳴らして気炎を上げぬ

024:バランス  降りつもる記憶の丘のささめ雪バランス崩す心に風巻(しま)く

025:化    月影に化けし木ならん天空に白き羽ごろも舞ひて静けし

026:地図    地図なぞる手のひら奔る命線ちぎる未来を天啓と思ふ

027:給     給餌(きふじ)せし日日を鳥鳴く鳥籠が今は私を入れて開かぬ

028:カーテン  カーテンの向かふの影は春愁か 艶(なま)めく風に木木のざわめく

029:国     国生みの話に更けし夜もありて細やぐ燭に屏風絵の消ゆ

030:いたずら いたづらに過ぎゆく日日よ 虚無といふ心の奥を満たせ春光

031:雪    死のやうな雪の結界 無常とふ心に降らす夜の泡雪

032:ニュース 毎日がニュースのページ繰りかへす良きも悪しきも徒然の春

033:太陽   悲しみは太陽塔の下に捨て燃ゆる西日に身を戦がせぬ

034:配    頼朝の配流の地なれ をみな等が焚く菊の香も潮騒となり

035:昭和    昭和から続く日溜まり 意識とふ不思議な世界ひそと踏みたる

036:湯    真青なる彼の日の泡(あぶく)馥郁と今日のいで湯にしたたりて消ゆ

037:片思い   潮鳴りの一夏(いちげ)眩しき片思ひ 耳に涼しき声の遠のく

038:穴     崩落の穴ゆ堕ちこむ夢の中 か細きみづに睡蓮の消ぬ

039:理想    理想ゆゑワン・パターンに繰りかへす日記のなかの深きため息

040:ボタン   一つだけ外すボタンの高鳴りに燃ゆる思ひをもう捨てられぬ

041:障     ぴつしりと閉めた障子の音曳きて降りだす雨のそぞろ春なる

042:海     海を刷く夕日のなかにゐる我へ敗北感が青くたたずむ

043:ためいき  ためいきが生(あ)れし春より熱を病み白薔薇重き朝のカーテン

044:寺    鐘鳴るや寺奥(じあう)は千のオーロラを放ちて我の明日を吹雪きぬ

045:トマト  飲食(をんじき)の最中トマトの熟しゆく 日あたる場所に寂しきは赤

046:階段     階段は石を穿ちしそのままに冬の感傷凍みて苔むす

047:没     日没へ翳りて痩せる指(および)ゆゑリングはいつも人拒みゐし

048:毛糸    解しゆく母の毛糸が残す冬 五歳の記憶ふはり覆ひぬ

049:約    約束はひと冬越えて黄ばみたる 心の薔薇(さうび)美しく散れ

050:仮面   けふ仮面あすは狂気の日日のすゑ激しき恋の炎燃え尽く

051:宙       宇宙へと去りにし時間(とき)の数数をふふむ陽炎街に揺らめく

052:あこがれ  触れし日の感触淡くあこがれのパロディー綴る思春の夕べ

053:爪    爪さきを先づあはあはと染めゆくは遊女墓とふ遠き憂愁

054:電車   西日して虚ろを揺らす電車よりミレーの農婦遠ざかりゆく

055:労      労働の後の手のひら爽らかに少し細りし影を落としぬ

056:タオル   泣きし日のタオルは青く泣かぬ日の女の頬を染めて滴る

057:空気     春さやに湿る空気へ触れし髪 泣かぬ女とならん明日は

058:鐘      祇王寺の鐘けざやかに春を告ぐ ああ懊悩の幕を下ろさな

059:ひらがな  ひらがなが溢れだしたるページから一筆まゐる明日のわかれを

060:キス   <キスシーン・恋ひと夏>といふ辺り映画・喫茶の街の寂しも

061:論    論じあふ時間たつぷり残されて 被髪(うなゐ)乙女に寒き春くる

062:乾杯   北欧の夜はベーゼか乾杯か けふ最終の便へ乗り継ぐ

063:浜     砂浜を凪ぐ夕映えは春愁のいろ美しき私の海図

064:ピアノ   何気なく亡母(はは)のピアノへ触れし夜の遠き旋律わが耳に舞ふ

065:大阪   大阪に棲みし三年(みとせ)のぼうたんが崩れゆくなり 愁思の庭に

066:切    切れさうな恋に啼きゐし空蝉のこころ遠かり春光のなか

067:夕立      夕立の中洲すずしき傘のなか 対岸ゑがく真黒き夏日

068:杉        杉こだち記憶の欠けら回しつつ今なき人へシャッターを切る

069:卒業   卒業の向かふに萌ゆる早春の丘へ真白きリボン解かん

070:神      神領のひえびえ親し 耳朶震ふ鈴の薄暮へしばし目つぶる

071:鉄    鉄柵のかなた囚はれゐる影がややも歪みて秋愁と思ふ

072:リモコン リモコンの真四角滑る指(および)ゆゑ指紋はきくと玻璃に浮かびぬ

073:像        彫像と櫻しぐれのハーモニー醸す湖面の白き細波

074:英語   英語もて歌ふアリアに酔ひし身に夕焼け色のショール纏ひぬ

075:鳥    窓際に降る雨ほろり飛びたちて晴れし夕空鳥渡りけり

076:まぶた  まぶた閉ぢ心昂ぶるもの思ひ 未完のことば青く揺らめく

077:写真   告白が映りし写真 蒼白き笑まひの中に君は目を閉じ

078:経   ローマンへ翼ひろげし旅を経て朝顔ひらく明日へ帰りぬ

079:塔   塔にある陰の地点を踏むまへにヘルマン・ヘッセうたた読み上ぐ

080:富士   富士湯とふ外湯回れば肩掛けを濡らす夕日がはや落下せり

081:露    露地奥に熟れぬ柿もぐあの秋の記憶は今もつぶらに青し

082:サイレン サイレンの抑揚響くふたひらの耳の儚さ 空爆がもう

083:筒   筒井筒わがエッセーに顔をだす君いづくなれ 蝉しぐれ降る

084:退屈     退屈な日にも開かん睡蓮の音し聴こゆる夏のたまゆら

085:きざし きざしたる熱に脳(なづき)の重たくて泡雪ほどの息にたゆたふ

086:石      石となり眠る日浅く逝きし父 血流あをく透きて春なる

087:テープ   テープ投げ君にさよならした後の百合の日溜まり涙映せり

088:暗   暗闇に明日は咲くらしひとひらの櫻散りたる 冷え冷えと春

089:こころ  こころばへ美(は)しき拒絶もあるといふ 萎えしそびらに見尽くす冬野

090:質問  質問が硬直したるきざはしへ落つる春暮にことば失ふ

091:命   黎明は命のいろを吐きゐしか 夭折といふ血色染めしか

092:ホテル はたはたと雪に真白き冬蝶の翅はホテルの灯より出でざる

093:祝   祝日を活けし木蓮黄ばみたる夜は小寒き春の音する

094:社会  社会科と理科のあはひを縫ふやうに過ぎる五月の花の幼さ

095:裏   封筒の裏面を印す己が名へ櫻咲くらし夜の投函

096:模様     春の熱うつらと潤む目(まな)裏に明日の模様(もんやう)描きては崩す

097:話       話から派生せし夢こんこんと湧く泉なる 穢されずあれ

098:ベッド  寝がへればベッドまだるき春の音 雪の玻璃戸へ虚ろに軋む

099:茶     茶話会の春宵となる窓透かしつがひの鳥の美(は)しき嘴(くち)づけ

100:終     かの人も終着駅へ開け放つロビーにあらむ パリの休日

なんと5着、でも内容は昨年に劣るわ;;
 

2月歌会「初雪」より

 投稿者:みずき  投稿日:2007年 3月 2日(金)20時18分4秒
  もの思(も)へば雪のゆふぐれ 素の顔にひと筆刷けば雪・雪・雪に★

せつせつと舞ふ初雪に眩みつつ無音のなかの想ひを聴かむ★★★(銀賞)

死のやうな雪の結界 鳩尾(みぞおち)に傷み奔りて夢幻なる宙(そら)★

狂ひしは雪か小枝かふるふると明日へ渡れぬ夜が啼いてる

木も森もただ凄まじく垂れさがる雪の袋に抱かれ逝きたし

番外
初雪に思ひ絡めて零したるため息ひとつ しらしらと窓
この夜の思ひの欠けら雪となれ 降り初めてもう三時間余が
黎明は雪ふる辻を曲がりきて心こほらす夢を解きぬ
 

1月歌会「誓う」より

 投稿者:みずき  投稿日:2007年 2月 5日(月)15時43分19秒
  消えさうな誓ひへ戦ぐふたひらの耳の儚さ 携帯を切る★★★★(金賞)

かの淵へ捨てし誓ひも裏切りもページを濡らす朱の一行詩★★★(銀賞)

誓ひゆゑ壊れぬものとおほぞらが海の青きに耀ける朝★

身の奥処(おくが)仄かに傷む追憶は雪降る夜の誓ひに白き

空あふぐ湖畔の裸像くねくねと月光ゆらすヴィーナスライン

番外詠草
頬あをく誓ひも青き花びらのなか閉ぢこめて君は逝きしか
消えさうな誓ひに縋りとりあへず onしんしんと耳が冷い
プロポーズの誓ひぽろぽろ濡らす夜は指に重たきリングの冷ゆる
見失ふ約束追へば青春の坂転げゆくわたしの石が
 

12月歌会「クリスマス」より

 投稿者:みずき  投稿日:2007年 1月 1日(月)14時40分57秒
  雪垣に村の凝れる群青(ぐんじやう)がしんしん毀れひじり夜灯す★★★(銀賞)

馬小屋に生(あ)れし聖者よ 雪しまく樹海は皓と気高さに満つ★★(銅賞)

心字池さりさり懸かるイブの雪 一の橋より明日へ渡らむ★

メロディをふふむ街ごと煌めきて雪降る門(かど)に葉つぱ飾らふ★

電飾の灯す優しさ酒気はらむモッズヘアーも雪の精霊

番外詠草
その橋を渡れ時速100キロのカーぶら下がるイブの人形
答弁もクリスマス調そこそこに会議は踊り人形眠る
 

11月歌会「旅へ・・・」より

 投稿者:みずき  投稿日:2006年12月 9日(土)17時53分47秒
  本詠草
降りしきる星は草魚となりたるや大利根てらす過去の秒針 ★★(銅賞)
真つ白なペンギンの朝 流氷の果てをつんざき日の立ち上がる ★★(銅賞)
北欧はクリスマスてふ滑りそな足裏(あうら)を灯す石のきらめき ★★★(銀賞)
うづしほの極みて捨てし一枚の恋は小雪か ばうばうと北 ★★★(銀賞)
メキシコの角に毀れる太陽がイッペソほどの躊躇ひを染め ★★★★(金賞)

番外詠草
ひと気なき冬の避暑地へふうらりと満月いでて影をうしなふ
もうすでに師走まぎはの終列車レールに敷くは星くずの夢

前回に続いてのパーフェクトでしたー
 

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